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創業時に大きな壁となるのが、資金不足の問題です。
すでに安定している会社ならともかく、まだ実績も人脈もない状態では、どこから資金を出してもらえるのか、悩むことになるでしょう。
創業時の資金調達先としてはどんな選択肢があり、どれが最適なのか、当面必要な資金はいくらなのか、といった疑問に答えていきます。

創業に必要な資金と、おすすめの資金調達方法は?

創業時に必要な資金の目安は?

はじめに、創業時の会社設立に必要な費用や、会社を軌道に乗せるまでに当面必要な経費を見積もりましょう。
売上を一定確保するまでは、自己資金だけでは不足する可能性が高いです。
そこで、少なくとも開業から6ヶ月~1年の範囲で、経費に充てる資金を確保しておくことが重要です。

まずは、会社設立に必要な費用について説明します。

法定費用240,000円(収入印紙代含む)

法定費用の内訳は、登録免許税や定款認証手数料などです。
電子定款にすると、収入印紙代が不要になるので、20,0000円で設立できます。

会社設立手続きについて、行政書士や税理士に相談すると、0円創業が可能になることがあります。
創業後に顧問契約をするのが条件になりますが、資金繰りや経営のサポートでも長期的に頼りにできる存在となるでしょう。

その他の手数料

その他、会社員感の作成や印鑑証明取得、登記簿謄本の発行などで、約2万円の費用がかかります。
手続きの代行サービスを利用する場合は、その手数料(相場は5~9万円)も必要です。

資本金

現在は、資本金が1円からでも会社をスタートできますが、創業直後の経費を賄うには、ある程度資金を保有しておくと安心です。
毎月の必要経費は事業の内容によりますが、共通する考え方として、以下のように算出できます。

固定費用(家賃や人件費、光熱費など)+変動費用(材料費など)

固定費については、売上の変動に関わらず毎月ほぼ一定なので、算出するのは容易です。
変動費については、例えば売上が上がれば材料費も高くなるように一定していないので、売上見込みから平均を出して目安としましょう。

創業直後は、商品・サービスの認知度がまだ低いので、大きな売上を見込むことはできません。
また、開業前は設備費や備品、店舗改装費や宣伝費といった経費で圧迫されます。
なので、軌道に乗るまでは売上ゼロの場合まで想定して経費を多めに見積もり、余裕を持って資金を準備しましょう。

資金が不足してから借入をするという、その場しのぎの考えでは危険です。
なぜなら、実績がなく不安定な会社に対しては融資を渋るところが多く、借りたいときに借りられる可能性が低いからです。
資金計画をおざなりにしていたために、倒産してしまうことになりかねません。
だからこそ、創業時に適切な資金調達方法によって、手元資金を十分に確保しておくのが重要です。

創業時におすすめの資金調達先は?

創業前や開業直後の会社に対しても、融資や出資を積極的に実施している、8つの資金調達先や制度を紹介します。

銀行(信用金庫・信用組合)

銀行には、地方銀行、メガバンク、信用金庫などがありますが、創業時の資金調達先としておすすめなのは、信用金庫・信用組合です。
メガバンクや地方銀行は利益重視で運営されているため、返済能力の見極めが難しい開業前・直後の会社は、審査に通るのが難しくなります。
一方で、信用金庫・信用組合は、会員の利益を重視した融資を実施しています。
財務状態に限らず、事業の成長性や経営者の人柄といった面まで考慮し、柔軟に対応してくれます。
また、信用金庫・信用組合は小口融資にも対応できるので、個人事業主・小規模事業者の資金調達先としても最適です。
さらに、創業支援融資(ローン)や経営サポートなど、創業者に嬉しい支援サービスが充実しています。

銀行窓口では、「信用保証制度つき融資」を申し込むことができます。
銀行融資において、公的機関である「信用保証協会」が公的な保証人になり、借入を容易にする制度です。
創業計画段階でも、無担保・低金利で借入が可能で、長期融資にも対応しています。

メリット
  • メガバンクや地方銀行より対応が柔軟
  • 小口融資に対応している
  • 創業者向けの融資やサポートが充実している
デメリット
  • 他の銀行より金利が0.5~1%高くなる
  • 資金量が少なく、大口融資に対応できない

日本政策金融公庫

政府系の金融機関である日本政策金融公庫では、新規開業をサポートする融資制度が充実しています。
例えば、以下のような融資制度があります。

  • ①新創業融資制度
  • ②新規開業支援資金
  • ③女性、若者、シニア起業家支援資金
  • ④新事業活動促進融資制度
  • ⑤再チャレンジ支援融資制度

①は最大3,000万円、②~⑤は運転資金4,800万円、設備投資7,200万円までの融資が可能で、融資期間は7~20年に設定されています。
これらの制度を利用する上での特例措置「新創業融資制度」が適用されると、審査が早い(約3週間~1ヶ月)のも魅力です。

さらに、「セーフティネット貸付」制度があるので、開業後の不安定な時期にも、頼れる相談先となるでしょう。
銀行の信用保証つき融資とは別枠で利用できるので、増資の拡大に活用できます。

メリット
  • 創業者向け融資制度の種類が銀行より多い
  • 無担保無保証人、少ない自己資金で利用できる
  • 銀行融資よりも金利が安い
デメリット
  • 消費者金融機関より審査期間が長い
  • 銀行融資から日本政策金融公庫への借り換えは不可

商工会議所・商工会

商工会議所は、全国に市区単位で500ヶ所以上設置されている公益経済団体です。
公益法人として経済産業省が管轄している組織で、中小企業のサポートなど地域に密着した経済振興活動を行っています。
商工会議所より規模が小さく、町村単位で設置されているのが商工会です。
商工会は中小企業庁に管轄されており、根拠となる法律が商工会議所とは異なりますが、基本的に業務内容はよく似ています。

商工会議所・商工会は、事業者であれば自由に加入することができます(強制加入ではありません)。
入会費と年会費を払えば加入資格を得ることができますが、事業開始後でなければ入会できないことがあります。
ですが、未加入でも創業に関する窓口相談を受け付けており、「創業支援融資」を利用することができます。

例えば、東京商工会議所の「創業支援融資補償制度」では、信用保証協会と連携し、創業融資と経営のサポートを実施しています。
創業計画書の審査を行い、融資対象に認定されれば、原則無担保で最大2,500万円の融資を受けることができます。

他にも、講義・ゼミナール形式の創業セミナーや、事業者交流会などのイベントといった起業支援サービスが充実しています。
会員になると、低金利(約1%)の「マル経融資」の利用が可能になります。
会費以上のメリットが享受できるので、加入しておいて損はないでしょう。

メリット
  • 低金利で融資を利用できる
  • 起業支援サービスが充実している
デメリット
  • 入会費と年会費を支払う必要がある

地方自治体

地方自治体では、創業者向けの融資や補助金・助成金を申し込むことができます。
自治体の窓口を介して、銀行や日本政策金融公庫の融資に申し込むと、審査に通りやすくなるほか、金利が安くなる可能性があります。
自治体は信用保証協会や銀行と連携し、金利や保証料の負担によって融資の貸し倒れリスクを下げているので、審査のハードルも下がるのです。

自治体ごとの制度融資の金利にはやや差がありますが、より安い金利を求めて自由に選ぶことはできません。
利用できる制度融資は、会社所在地の自治体に従うことになるからです。
地方自治体ごとの企業支援センターでは、起業セミナーや経営相談といった支援サービスも実施しています。
これらは無料または低価格で利用できることが多いので、積極的に活用していきましょう。

メリット
  • 創業時でも融資の審査に通る可能性が高い
  • 無料または低価格で起業支援サービスが受けられる
デメリット
  • 融資の審査や、補助金と助成金の申請には時間がかかる
  • 会社所在地の自治体でしか支援を受けられない

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルは、特に若手ベンチャー起業家に注目されている資金調達方法です。
将来性の高い会社に対して、ハイリスクハイリターンを狙って巨額投資を行っているのが特徴です。
さらに、ベンチャーキャピタルならではの経営スキルや人脈を活かし、積極的なバックアップを行うので、融資を上回る成長スピードが期待できます。

ベンチャーキャピタルは会社の株式を購入して出資する仕組みなので、返済の必要はありません。
株式の持ち分に応じて、経営に影響力を持つようになるので、出資割合には注意する必要があります。
会社の成長後は、株価が上昇した株式を売却することで、元手の何倍もの利益を出しています。

ベンチャーキャピタルから出資を受けるには、創業者向けのイベント・交流会や直接の問い合わせによって接点を作ります。
そして、プレゼンテーションや交渉を行い、ベンチャーキャピタルの投資方針と合致すれば、出資が実行されます。
投資方針は、会社の成長段階の指標となる「ラウンド」によって左右されます。
創業時の会社であれば「シードラウンド」という段階にあたり、500~1,000万円の出資が目安になります。
ベンチャーキャピタルとコンタクトを取る際は、まず相手がどのラウンドに対して投資を行っているのかを確認しましょう。

メリット
  • 返済の必要がない
  • 強力な経営バックアップが受けられる
  • ベンチャーキャピタルを起点にネットワークが広がる
デメリット
  • 会社の経営権を握られるリスクがある
  • ベンチャーキャピタルの期待する利益を出す必要がある

クラウドファンディング

近年、急成長しているフィンテック(ファイナンス・テクノロジー)を活用した資金調達方法が、クラウドファンディングです。
インターネット状のクラウド(群衆)に対して出資を募り、広い範囲から資金を集めるという方法です。

商品・サービスの優先購入権や金銭的リターンを提示して出資を呼びかけ、投資家や会社のファンを集めることができます。
資金調達に留まらず、会社の認知度を上げる宣伝ツールとしても活用する価値があります。

目標金額を調達できた場合は、クラウドファンディング事業者に手数料を支払った後、資金を得ることができる仕組みです。
目標金額に届かなかったとしても、それまでに集まった支援金がユーザーに返還されるだけで、会社にとって金銭的なリスクはありません。

メリット
  • 返済の必要がない
  • 会社の認知度を高めることができる
デメリット
  • 目標金額に達しなければ資金が得られない

エンジェル投資家

投資事業会社であるベンチャーキャピタルに対し、エンジェル投資家は個人で投資を行っている元起業家・経営者などを指します。
ベンチャーキャピタルよりも投資規模は少額ですが、必ず利益を出さなければならない、というプレッシャーは少ないです。
投資家の経験を活かした経営アドバイスが受けられる他、有名な投資家がバックにつけば会社の信頼度を高めることもできます。

エンジェル投資家と出会うには、有名な投資家に直接コンタクトを取り、セミナーなどのイベントで接点を増やす、といった方法があります。
エンジェル投資家と起業家をつなぐためのマッチングサイトも利用すると良いでしょう。

日本では、平成9年から「エンジェル税制」が導入されたため、創業者への出資に意欲的な個人投資家が増えています。
株を取得した歳に、控除によって税負担が軽くなるのに加え、万が一、会社が倒産したときの損失も軽減できます。

エンジェル投資家は経営者に限らず、資産に余裕のある身近な親族、友人や知人に相談すれば、協力してくれる可能性があります。
投資に明るくない相手に対しては、エンジェル税制を紹介して説得すると、後押しになるでしょう。

メリット
  • 返済の必要がない
  • 投資家からのアドバイスや人脈が得られる
デメリット
  • 一人あたりの出資額が少ない傾向にある

ビジネスコンテスト

企業や自治体では、起業家がビジネスプランを発表し、上位入賞を競う「ビジネスコンテスト」が開催されています。
上位入賞者には賞金が支払われるのに加え、経営のバックアップが受けられます。
また、入賞実績があると会社の信用度が上がり、金融機関からの融資を受けやすくなります。

ビジネスコンテストには、一般参加者や投資家、マスコミなど幅広い層が集まるため、事業のPRの場としても有益です。
入賞はできなくても、人脈づくりや宣伝のために参加するメリットは大いにあるでしょう。

ビジネスコンテストは、誰でも参加できるイベント以外に、学生向けや女性起業家支援などテーマの決まったものもあります。
また、主催者の方針によって審査基準が異なっています。
参加するイベントの傾向を調査して、自社や経営者の属性に合ったイベントに参加すると、より入賞のチャンスが高まるでしょう。

メリット
  • 入賞すれば賞金がもらえる
  • 事業を参加者にPRできる
デメリット
  • 入賞できなければ資金が得られない
  • エントリーや準備の手間がかかる

創業融資や創業補助金を活用しよう

新創業融資制度(日本政策金融公庫)

日本政策金融公庫の融資制度を利用する際に、創業者が受けられる特例措置が、「新創業融資制度」です。
新創業融資制度には、以下のようなメリットがあります。

  • 通常数ヶ月かかる審査が、約1ヶ月に短縮される
  • 担保や保証人が不要になる

上記のメリットが受けられる代わりに、融資限度額が3,000万円(うち運転資金1,500万円)に引き下げられてしまいます。
しかし、スピーディーに開業資金を調達したい場合には、十分な措置といえるでしょう。
返済期間は、各融資制度で定める期間に従います。

新創業融資制度を利用するには、主に以下の条件を満たしている必要があります。

  • これから事業を始める人、または事業の開始後2期分の税務申告を終えていない人
  • 雇用創出、経済活性化についていずれかの要件に該当しているか
  • 自己資金要件を満たしているか(創業資金総額の10分の1以上)

この制度を利用すると、創業者でも好条件で融資が受けられるのは事実ですが、審査は決して簡単なわけではありません。
創業計画書のフォーマットにきちんと従っているのはもちろん、具体的なビジョンと実現性、熱意が感じられることが前提です。
また、自己資金は創業資金総額の約3分の1程度を目安に、余裕を持って確保しておくと安心です。

融資の審査に必要な創業計画書の準備や、融資実行までの流れは、以下のとおりです。

  1. 日本政策金融公庫のウェブサイトから、創業計画書のフォーマットを入手する。

  2. 創業計画書に、以下の項目を記入する。

    • どのような目的、動機から創業に至ったか?
    • 経営者の略歴や、過去の事業経験、取得資格の有無、知的財産権等
    • 取扱商品やサービスの内容とセールスポイント、複数ある場合はそれぞれの売上シェア
    • 販売先や仕入先、外注先などの取引先情報
    • 人件費の支払条件やボーナスの支給条件
    • 従業員(正社員)やパート、アルバイトの人数
    • 借入状況(借入先や使いみち、残高、年間返済額)
    • 必要資金(設備費や運転資金)と金額、調達方法
    • 月平均の事業見通し(売上高、経費、利益)
  3. 創業計画書に加え、以下の必要書類を準備し、郵送で提出する。

    • 借入申込書
    • 本人確認書類(運転免許証)と通帳の写し
    • 印鑑証明書
    • 履歴事項全部証明書
    • 資金繰り業
    • 賃貸借契約書

    その他、設備投資の有無や業種によって必要書類が変わるので、詳細は日本政策金融公庫の創業ホットラインに問い合わせましょう。

  4. 書類受付から数日後、面談で審査を行う。

  5. 手審査後、数週間で結果の通知を受け取る。

  6. 結果の通知から約数日で、資金を受け取る。

創業補助金

創業補助金とは、正式名称を「地域創造的起業補助金」と呼び
新たに創業を行う者を支援することで経済活性化を図る制度です。
補助金額は、補助対象と認められる経費の2分の1以内で、かつ50万円以上200万円以内(外部資金調達がある場合)となります。

補助金の使いみちは一部制限もありますが、

  • 内外装工事費や備品費
  • 従業員やアルバイトへの給与、賞与
  • 賃借料(家賃やリース料など)
  • 広告宣伝費

といった、経費負担の大きいものに使える点は大きなメリットです。

ただし、創業補助金の公募期間は限られています(平成30年度は4月27日~5月22日)。
余裕を持って申請の準備を始めるために、中小企業庁のHP等に発表される情報を見逃さないようにチェックしましょう。

創業補助金の対象となるのは、以下の条件に該当する人です。

  • 指定の期日以降に、認定市区町村で創業(会社設立や開業届の提出)を行う予定がある
  • 従業員を1人以上雇う予定がある
  • 認定連携創業支援事業者から支援を受けている、または受ける予定がある

補助金にはいくつかデメリットもあるので、申請する際は以下の点に注意しましょう。

  • 厳正な審査があり、必ず交付されるとは限らない
  • 補助対象の事業が完了後、報告書を提出してからの後払いになる
  • 補助対象外になる経費がある(社会保険料や車購入費など)
  • 補助金交付後5年間は、事務局に事業報告書を行う必要がある
  • 事務局による実地調査や、会計検査院による調査が入る
  • 所得税や法人税の対象になるので、黒字企業はメリットが少なくなる

特に、会社が黒字だと税金が大きく引かれて、補助金の約半分しか残らないこともあります。
補助金の利用には、事業内容の報告や調査など手間がかかるため、それに見合うメリットが得られないかもしれません。
なので、創業補助金を申請するのがおすすめなのは、税金を払う必要のない赤字企業となります。

また、事業完了後の後払いなので、資金を至急調達する必要がある場合には不向きです。
補助金ばかりに気を取られていると、ビジネスチャンスを逃してしまい、大変な手間をかけたにも関わらず審査に落ちた、などかえって損失になる可能性があります。
なので、創業補助金はメインの資金調達方法というよりは、後で経費を補填するためのサポート手段として考えたほうが良いでしょう。

創業補助金の申込みから、補助金を受け取るまでの流れは以下の通りです。

  1. 中小企業庁HPの「補助金公募案内」から応募要項を確認し、申請書をダウンロードする。
  2. 申請書に、事業計画や資金計画などを記入する。
  3. 申請書を事務局に提出する。
  4. 補助金の交付決定について事務局から通知が来る。
  5. 事業を開始し、事務局や会計検査院からチェックを受ける。
  6. 事務局に経費を報告し、認可されると補助金が交付される。
  7. 事業完了後も5年間に渡り、領収書や証拠書類を保管し、必要に応じて報告を行う。

特に、申請書類の作成は補助金交付の可否を左右する重要なポイントです。
事務局は、事業の実現可能性や継続性、収益性の高さなどを重視して、審査を行います。

採択率は、応募総数の約半数の年もあれば、それ以上の年もあり、目安を出すのは難しいです。
ただし、締切日間近になって応募すると、採択率が下がる傾向にあるので、早めに申請を済ませておきましょう。
もし審査に落ちてしまったとしても、2次締め切りがあれば、再度応募にチャレンジすることができます。

創業補助金申請のチャンスは限られているので、書類のヌケモレなど些細なミスで審査に落ちないよう、提出前に入念な見直しをしましょう。
中小企業庁サイトでは、提出書類チェック表を公開しており、提出直前の最終チェックに役立ちます。

創業時の資金調達の注意点は?

融資・出資を受ける前に、いくつか注意点を押さえておきましょう。

議決権の割合に注意する

ベンチャーキャピタルや個人投資家に株式を売却して出資を受ける場合、会社の議決権の一部が出資者に移ります。
議決権とは、経営方針に関して決定する権利のことで、株式の保有数が多いほど決定権は大きくなります。
多くの金額を出資して貰う場合、出資者に経営権が大きく左右される恐れがあります。
外部からの出資が株式の3分の2を超えないようにして、自社の議決権を確保しなければなりません。
特に、経営に積極的な介入を行う傾向のあるベンチャーキャピタルから出資を受ける際は、注意しましょう。

投資家の出資割合が大きいと、創業融資を受けるときにも影響があります。
例えば、あるベンチャー企業が大手企業から多額の出資を受けているケースでは、その企業は大手企業のグループ会社とみなされる可能性があります。
そうなると、融資は大手企業の借入枠から受けることになり、創業融資は利用できなくなります。

万が一のときの資金調達手段を確保しておく

「銀行は雨の日に傘を貸さない」と言われているように、経営がピンチのときに限って、融資が受けられないことが多いです。
なので、万が一に備えて確実に資金調達ができる手段を講じておくのが、とても重要です。

おすすめなのは、事業者向けの共済に加入しておくことです。
個人事業主や役員向けの「小規模企業共済」や、中小企業経営者の経営難や倒産を防止するための「中小企業倒産防止共済」があります。

共済には貸付制度があり、積立額に応じて緊急時の資金調達が可能です。
取引先が倒産すると売掛金が回収できなくなり、引きずられるように自社も倒産する「連鎖倒産」対策としても有効です。
「中小企業倒産防止共済」では最大8,000万円の資金を無担保・無保証人でスピーディーに調達できるため、強力なセーフティーネットになります。

売掛金が発生するタイプの業種(建設業や製造業など)は特に、リスクマネジメントとして共済に加入することをおすすめします。
その他、掛け金を経費に計上して節税できるほか、解約金を退職金代わりとして税金が安くなるなど、様々なメリットがあります。