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ファクタリング業者のことを「違法な闇金」と誤解している人は少なくありません。
ここ数年、悪徳業者に関する悪いニュースが目立ったため、ファクタリングもネガティブな印象をもたれてしまっています。

ですが、取り沙汰されているのは、ファクタリング取引自体ではなく、それを隠れ蓑にした悪徳業者なのです。
ファクタリング自体は違法な取引ではないと理解していれば、無用な心配はしなくてすみます。
ここでは、ファクタリングの誤解されやすいポイントを、法律面から詳しく説明していきます。

ファクタリングは貸金業ではない!

ファクタリングは、手数料が10%~20%以上になることがあるので、違法な貸金業者と間違われることがあります。
ときに高額な手数料がかかる点では、闇金融と似ているので、無理もないでしょう。
(ファクタリングの手数料は一律に高いというわけではなく、取引条件によっては安く抑えることも可能です。)
また、「最短即日で資金調達ができる」「審査のスピードが早い」といった点では、融資との共通点があります。

ですが、ファクタリングの仕組みは、以下の2点で貸金業と全く異なっています。

ファクタリングは債権の売買取引である

融資とは、「銀行や消費者金融が、利用者にお金を貸付ける」仕組みのことをいいます。
一方でファクタリングは、「ファクタリング業者が利用者から売掛債権を買取り、その代金支払う」仕組みになっています。
つまり、ファクタリングとは売掛債権の売買取引のことなので、利用者が業者に対して返済するという行為を行う必要がありません。

また、ファクタリングの多くは、ノンリコースの取引になっています。
ノンリコースとは、万が一買い取られた売掛債権が不渡りになっても、利用者は業者に対して返済義務を負わなくてもいいという取り決めです。
ローンと違って返済の負担がないことに加え、債権の不渡りリスクをファクタリング業者に移せる、というメリットがあります。

ファクタリングは「BtoB」の取引である

貸金業は「BtoC」の取引で、ファクタリングは「BtoB」の取引である、という違いも存在します。
BtoCとは、事業者と個人の間で行われる取引のことです。
例えば、消費者金融やクレジットカード会社が個人に対して貸付けを行うのが、BtoCに当たります。

一方でBtoBとは、事業者と法人の間で行われる取引を指します。
したがって、ファクタリング業者と法人の間で債権売買契約を交わすファクタリングは、BtoBに当たります。

このように、ファクタリングは貸金業とは異なる取引なので、貸金業法による規制の対象にはなりません。
ファクタリング業者は、貸金業者の登録をする必要がなく、手数料を自由に決められます。
貸金業者の場合、貸金業法によって金利の上限(法定金利)が定められています。
それを無視して、違法な金利で貸付けを行う業者はいわゆる「闇金」であり、摘発対象になります。

ファクタリングの手数料には上限が定められていないので、20%を超える手数料を取っても違法ではありません。
ただし、相場より高すぎる手数料を請求する業者は、悪徳業者の可能性が高いので注意しましょう。

ファクタリング自体は違法行為ではなく、業者と利用者のどちらも罪に問われることはありません。
また、貸金業法が定める「総量規制」の対象にもならないので、売掛債権の金額の範囲内であれば、いくらでも資金調達ができます。

総量規制とは、借入総額を年収の3分の1までに制限することです。

ファクタリングに間違われやすい商品として、「売掛債権担保ローン」というものがあります。
売掛債権担保ローンは、売掛債権を担保に貸付けを行うので貸金業に該当し、貸金業法による規制対象になります。
ファクタリングを装って、法外な金利で貸付けを行う闇金も存在するので、注意しましょう。

ファクタリングに対する法律の規制はある?

日本は海外よりファクタリングの普及が遅れているため、法律による規制が十分ではありません。
ファクタリングに対する金融庁の見解ははっきりしておらず、現時点では黙認されている状態です。
違法な貸金業ではないことは明らかなので、すぐに厳しい規制が実行されることはないでしょう。

他方、経済産業省や中小企業庁では、売掛債権の有効活用を図るため、ファクタリングの普及を呼びかける動きがあります。
なぜなら景気の悪化が原因で、従来の不動産を担保にした借入れでは、資金繰りの改善が難しくなっているからで、不動産担保に依存しないスムーズな資金調達を実現するために、ファクタリングが推奨されているのです。

しかし、ファクタリングの普及を阻んでいる問題点がいくつか存在します。
ひとつは、ファクタリングに対する企業の理解が十分でなく、メリットが周知されていない、という点です。
「ファクタリングを利用する企業は、資金繰りが悪化している」という風評が知れ渡ることを恐れて、企業はファクタリングの利用をためらう傾向があります。
これに対し、国や地方公共団体では「債権譲渡禁止特約」の解除を企業に対して求めており、ファクタリングに対する悪いイメージを払拭しようとしています。

加えて、ファクタリングを規制する法律がないため悪徳業者が参入しやすく、無法地帯になっているという問題点もあります。
ファクタリングへの十分な理解が遅れているのが原因で、悪徳業者にあっさりと騙されてしまう企業が後を絶ちません。

ファクタリングに慣れていない企業にとって、「手数料が高いのか、安いのか」という判斷は難しいものです。
法律によって手数料の明確な基準が決められておらず、相場がわかりにくいことも原因になっています。
さらに、資金繰りに切羽詰まっている状況では、焦りで冷静な判断ができなくなり、悪徳業者につけこまれやすくなります。

ファクタリングの手数料は、取引条件によっては、10%~20%を超えることがあります。
この高い手数料が原因で、高金利な闇金との見分けがつきにくくなっているのです。
業者から高額な手数料を提示されたら、「ファクタリングならこんなものだろう」と考えずに、「闇金ではないか?」という疑いを持ちましょう。

ファクタリングでも、取引形態や売掛先の信用度によっては、手数料を10%以下に抑えることができます。
ファクタリングの取引形態には、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類がありますが、どちらを選ぶかによって手数料は大きく変わります。

2社間ファクタリング

企業とファクタリング業者の2社間のみで行う取引のこと。

3社間ファクタリング

企業、ファクタリング業者、売掛先の3社間で行う取引のこと。

手数料を安く抑えたいのであれば、相場が1%~5%の「3社間ファクタリング」がおすすめです。
3社間ファクタリングは償還請求権がある代わりに、業者の債権不渡りリスクや債権回収の手間が軽減されるため、手数料が安くなっています。
(償還請求権のある取引では、売掛債権が不渡りになった場合、利用者がファクタリング業者に対して売掛金を支払わなければなりません。)

一方の2社間ファクタリングの手数料相場は、10%~20%です。
法定金利と比べるとギリギリの設定なので、違法な闇金と疑われるのも無理はないでしょう。
なぜ手数料がこれほど高いのかというと、2社間取引では売掛先に対する保証がないため、債権不渡りのリスクが高くなるためです。

ファクタリング業者を装った闇金が摘発される

2017年に、「ファクタリング業者を初めて摘発」というニュースを聞いて、衝撃を受けた人は多いのではないかと思われます。
しかし、実際に逮捕されたのはファクタリング業者を装った闇金なので、ファクタリング自体の違法性が問われたわけではありません。

貸金業者は、貸金業法・利息制限法・出資法といった法律によって、以下のような規制がされています。

  • 上限金利は年20%以内
  • 財務局長と都道府県知事から許可を得て、貸金業者として登録しなければならない

闇金は貸金業者としての登録なしで融資を行っているので、貸金業法に違反しており、摘発対象となります。

2017年に逮捕された闇金の事例は、ファクタリングと称して、法外な金利で担保融資を行っていたことが発覚したため摘発されました。
その上、貸金業者としての登録もなく、無許可で融資を行っていました。

この悪徳業者は、全国250社以上の中小企業に約3億円の貸付けを行い、1億円を超えるお金を騙し取っていました。
その事実から、約30%という法外な手数料を請求していたであろうことが推測できます。
貸金業者としては明らかに違法な手数料であるにも関わらず、多くの中小企業が騙されてしまったのは、ファクタリングを装った巧妙な手口だったからでしょう。

この事例は氷山の一角に過ぎず、ファクタリング業者の皮を被った闇金は、まだまだ多く存在すると考えられます。
闇金の手口はますます巧妙化が進んでおり、警察が闇金を残らず摘発するまでには時間がかかるでしょう。

闇金による被害の拡大を防ぐには、利用者自身もファクタリングと融資の違いについて、理解を深めておく必要があります。
闇金は、ファクタリング業者に限らず、現金化業者やカード会社、投資信託会社に化けていることもあります。
このように、一見しただけでは闇金とはわかりにくいスタイルを取る悪徳業者は、「ソフト闇金」と呼ばれています。

ソフト闇金は、昔の闇金のように脅迫や暴力を使った取り立てをすることはありません。
表面的には、利用者に対して親切に振る舞っているように見えます。
しかし、あの手この手でお金を騙し取ろうとする点では危険な存在です。

ソフト闇金に銀行口座情報を渡してしまうと、「犯罪収益移転防止法」違反となり、利用者も逮捕される可能性があります。
このような恐ろしい事態に巻き込まれることもあるので、昔の闇金とは違って態度が柔らいからといって、ソフト闇金にも絶対に近づいてはいけません。

ファクタリング業者か悪徳業者か見分けるには?

ファクタリング業者を騙る違法な貸金業者の手口を、実際の逮捕事例を基にまとめました。

後で売掛債権を買い戻すように要求する

ファクタリングの利用者が売掛債権を売却した後に、売掛債権の買い戻しを要求してくる悪徳業者がいます。
例えば、「100万円の売掛債権を80万円で売却した後、その売掛債権を100万円で買い戻すよう要求された」というようなケースがあります。
この場合、利用者は20万円もの高額な手数料(利息)を支払うことになってしまいます。
悪徳業者は、取引をファクタリングのように見せかけていますが、その本質は売掛債権を担保にした高金利融資です。

契約直前、または契約後になって手数料の割り増しを要求する

巧妙な悪徳業者は、はじめのうちは聞こえの良いセールストークで顧客を取り込み、好条件の取引であるかのように見せかけて、契約直前にまで持ち込みます。
そして契約する段になって、何かと理由をつけて手数料を引き上げようとします。

手数料引き上げの理由のひとつに、「審査の結果、信用スコアが低いために手数料を上げざるを得ない」というものがあります。
しかし、悪徳業者は手数料引き上げの口実をでっち上げているだけなので、実際に審査を行っているかどうかは眉唾物です。
多重債務や返済滞納をした覚えがなければ、不当な審査結果は疑ってかかりましょう。

2社間ファクタリングの場合、契約の期日が来たらファクタリング会社に対して売掛金の支払いを行わなければなりません。
悪徳業者は、支払いが少しでも遅れようものなら、延滞金や分割手数料といった名目で、法外な違約金を請求し続けます。

以上が、闇金や悪徳業者がよく行う手口です。
悪徳業者は、司法・警察の目を巧妙にかいくぐっているので、実際に被害者が出るまでは摘発が困難な状況です。

対策としては、「契約内容に少しでも不審な点がある業者には申込まない」など、自衛をする他はありません。
ファクタリング契約の際は、以下の条件を満たしているかどうかを確認してから申込みましょう。

  • 契約書類に、ノンリコース(償還請求権なし)と記載されているか?
  • 会社のHPで、代表者名や所在地、連絡先などを嘘偽りなく開示しているか?
  • 手数料の内訳が明確になっていて、納得できるものか?
  • 適切に必要書類の提出を求めるとともに、丁寧な審査を行っているか?

後で契約条件をうやむやにされないよう、契約書の控えも貰っておきましょう。

良心的なファクタリング業者であれば、資金繰り・経営改善に関する相談に応じたり、アフターフォローなどのサポート体制が充実したりしています。
悪徳業者の場合は、お金を騙し取ることが最終的な目的なので、取引以外のことについては面倒を見てくれません。
手数料だけで判断するのが難しければ、サポートの丁寧さを重視して、ファクタリング業者を選びましょう。

もし悪徳業者と契約してしまったら、ファクタリングトラブルに詳しい弁護士に相談すると、契約解消のサポートをしてもらえます。
その際はスムーズに対処できるように、契約書類などの資料や、電話・メールでのやり取りの記録を証拠として残しておきましょう。