非営利組織

NPO(nonprofit organization)とは、非営利で社会貢献活動を行う団体のことですが、団体を運営維持していく上でも資金は必要です。
NPOの運営には、法人設立費用をはじめ、備品購入費や交通費、広報活動費などの経費もかかります。
収益を最大化して運営費に充てられる営利企業とは異なり、NPOにとって安定した資金調達は難しいイメージがあります。
NPOは活動に必要な資金をどうやって賄っているのか、という疑問に答えるとともに、資金調達の戦略や課題などを解説していきます。

NPOにはどんな資金調達方法がある?

NPOの資金調達方法とは?

営利企業と比較すると、資金調達方法の選択肢は少ないと思われがちですが、実際には多様な方法があります。
NPOの主な資金調達方法を、以下に挙げていきます。

会費収入

NPOは、会員から定期的に支払われる年会費・月会費といった会費収入や、イベント参加費用などで資金を集めることができます。
会員は、運営に必要な資金を負担し合う他、サービス利用の対価として、会費を支払う場合もあります。
会費の使いみちは自由で、かつ定期的な安定した収入なので、NPOにとって特に重要な資金源となるでしょう。
会員を集めるには、活動で得られる社会的な成果と、会員が得られるメリットを明確にする必要があります。
会員に対しては、会費が具体的にどのような目的で使われたのか、その結果得られた成果は何か、といった情報を逐一公開しなければなりません。
NPO創業時は、会員を集めるために、まず宣伝広告費用を捻出して活動を周知させる必要があります。
最も安上がりなのが、インターネットでウェブサイトを作成して団体の目的や活動を紹介することです。
ホームページを一度作成すれば、サイト維持費用も考慮すると月々1,000~4,000円の負担で、宣伝活動を行うことができます。

寄付金

寄付金とは、NPOの活動に賛同した人が、見返りなしで支払ってくれるお金のことで、重要な資金源のひとつです。
会費収入ほど安定していませんが、基本的には使い道が自由です。
ですが、やはり使い道を明確にしておくほうが、寄付金が集まりやすくなるのも事実です。
寄付金を集めるには、「Yahoo!ボランティア」などのネット募金を集めるサイトに参加して、アピールする方法が簡単です。
寄付をしてくれそうな個人・団体がいれば、電話や手紙、メールで個別に連絡を取るのに加え、直接訪問することで寄付をお願いする方法もあります。
寄付者は、はっきりと見返りを求めていないように見えますが、寄付してくれた相手に対しては、しっかりお礼をすることがとても重要です。
お礼をもらうことで、寄付者の貢献感や満足感が高まり、次回の寄付へのモチベーションも上がるからです。
会員に対するのと同様に、寄付者に対しても長期的なお付き合いをするつもりで、活動報告を定期的に行いましょう。

助成金

都道府県や市町村では、NPO法人に対して助成金によるサポートを行っています。
対象となる事業の種類や分野によって、様々な助成金制度があるので、「助成財団センター」ウェブサイト等で情報を集めましょう。
制度によって募集開始時期と終了時期が異なり、募集期間が限られているので注意してください。
募集情報を見逃さないように、各地のNPO支援センターや、市民活動支援センターからのお知らせをチェックしましょう。

助成金額は、1件あたり数万~数百万円が目安です。
助成金を受け取るには、まず各制度の応募要項を確認し、条件が合致していれば申請書を提出する必要があります。
そして、審査に通過しなければ受給対象にはならず、申請したからといって必ずもらえるとは限りません。
助成金の使いみちには制限がある場合が多く、事業終了後は、使途内訳などの報告書を提出する必要があります。
報告書で事業の成果や今後の展望、熱意をアピールすると、次回の助成対象に選ばれるチャンスにつながるでしょう。
NPOが申請できる助成金制度は、過去には例えば以下のようなものがありました。

ボランティアグループ等が行う事業への助成金

  • 在宅で高齢者や障害者をサポートする、地域福祉活動のための制度です。
  • 1件あたりの上限額は50万円まで(総額2,300万円)です。

ビジネスパーソンボランティア活動助成金

  • 保険や医療、福祉といった分野を対象に、ビジネスパーソンのボランティア活動を支援する制度です。
  • 1件あたりの上限額は20万円まで(総額800万円)です。

シニアボランティア助成活動

  • 60歳以上の高齢者ボランティア活動を支援する制度です。
  • 1件あたりの上限額は20万円まで(総額70万円)です。

補助金

国や各自治体では、NPOに対する補助金を申請することができます。
補助金は税金を原資としており、助成金と比較すると、受給条件はややハードルが高くなります。
NPOが対象の補助金制度については情報が少ないため、まずは助成金を優先して検討すると良いでしょう。
自治体の窓口に問い合わせると、実施中の補助金制度を案内してくれる可能性があります。

クラウドファンディング

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、ネット上で実現させたいプロジェクトやアイディアをPRし、一般の賛同者から広く資金を集める仕組みです。
最近では、NPOやngoなどの非営利団体に特化したクラウドファンディングサイトも登場し始めています。

非営利団体向けのサービスは、「寄付型クラウドファンディング」と呼ばれています。
例として、国内最大級の「Readyfor(レディーフォー)」というサービスが急成長を遂げています。
Readyforには、5,000件以上ものプロジェクト成功実績があり、初心者に使いやすいサービスとしても評判です。

このようなサービスを利用することで、NPOと寄付者双方に、以下のようなメリットがあります。

  • NPOは資金を寄付金として受け取ることができ、課税されない
  • 寄付者は寄付金控除を受けることができ、税金がお得になる

従来の寄付金を集める方法と同様に、調達した資金の使い道を定期的に公開することや、お礼をきっちりすることが重要なポイントです。

本来事業収入

NPOは基本的に非営利で活動を行っていますが、活動費を賄うために、事業収入によって資金調達を行うことが認められています。
事業収入には、「本来事業」と「非本来事業」があり、このうち本来事業とは本来の非営利活動に係る事業を指しています。
商品やサービスの対価として収益を得られますが、その使途はNPOの運営費や活動費に限定されています。
つまり、私的利益の追求のために事業を行うことはできず、あくまで公共的価値を追求するためだけに許されているのです。
事業の業種によっては、NPOの本来事業であっても、法人税法上は課税対象になります。
例えば、製造業や物品販売業や医療保健業、労働者派遣業などといった34業種が法人税課税対象となります。
ほとんどの事業がこの中に該当するので、課税対象になる可能性は高いと考えて良いでしょう。

非本来事業収入

非本来事業とは、NPOの本来の目的とは異なりますが、本来事業に充てる収益を賄うための事業を指しています。
NPOが自主的に行う事業の他に、国や自治体から委託される事業もあります。
ここで、本来事業収入との違いを確認しておきましょう。
例えば、NPOの目的がスポーツ振興であった場合、スポーツイベントの参加費用から得た収入や会費は本来事業収入にあたります。
非本来事業収入というのは、本来のスポーツ振興目的とは関係のない事業で、例えば物品販売業や不動産貸付業のような事業から得た収益のことです。
この収益の使途はもちろん、NPOの運営費・活動費のみに限られており、それ以外の使途は認められません。

非本来事業による事業費や総支出費が、特定非営利活動のそれを50%以上上回っていると、行政庁から報告を求められることがあります。
非本来事業による支出が本来事業を上回っている状態が数年続き、改善の様子が見られないのであれば、法人認証が取り消される恐れがあります。
本来事業の支出額が少なく、非本来事業収入がどうしても上回ってしまうのであれば、別法人を設立して事業収益を得るという方法もあります。
NPO法人のために別法人から支援事業を行うという形であれば、NPO法人自体の存続が危ぶまれる心配はありません。
また、非本来事業によって、特定非営利活動に支障が出ないように注意しましょう。
支出だけでなく、非本来事業に割く時間や人員といった点においても、本来事業を上回るべきではありません。

借入

営利法人と違って、強固な財政基盤を築きにくいNPO法人にとっては、融資のハードルが高いと思われるかもしれません。
ですが、現在ではNPO法人向けの融資制度も登場しており、借入による資金調達を行いやすくなっています。

経済産業省の調査によると、NPO法人の借入金は100万~500万円未満が平均的で、借入先の大半は個人が占めているようです。
まずは家族や知人のような信頼できる繋がりから借入を行うのが、NPO法人にとって現実的な手段と言えるでしょう。

民間金融機関からの借入については、「NPO事業への理解を得るのが難しい」「手続きが面倒」といった理由で、敬遠されやすいです。
ですが、公になりにくいだけで、NPO法人向け融資制度を活用し、少額融資を受けているNPOは実際に少なからず存在します。

地方銀行や信用金庫では、NPO法人向けに上限300~500万円(金利は3~5%)の無担保融資を行っているところが増えています。
政府系金融機関の日本政策金融公庫でも、「ソーシャルビジネス支援資金(企業活力強化貸付)」によるNPO法人向け融資を実施しています。
この融資制度は、最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)を限度に借入を行うことができます。
保証人や担保については要相談で、利率は担保の有無や返済期間によって変動します。

各地方自治体でも、NPO法人支援制度を実施しています。
例えば、東京都では「NPO法人向け保証付き融資制度」や、「コミュニティビジネス支援融資」といった制度があります。
詳細は、各自治体のウェブサイトを確認してみましょう。

NPOの資金調達の戦略は?

会議中

NPOにとってまず壁となるのが、創業時の資金調達方法です。
民間金融機関の一般的な融資は困難なため、創業時は個人・団体からの借入や会費収入、寄付といった手段で資金を集めましょう。
経済基盤の弱いNPOにとって鍵となるのは、個人との信頼関係です。
実際に、NPO法人の借入先は約60%が個人で占められています。
はじめは関係者や支援者を相手に私募債を発行するなどして、徐々に返済実績を積み上げていきましょう。
また、広く寄付を募るためには効果的なPR能力も必要となります。
創業期はNPO法人の認知度を高めて組織を強化するために、集めた資金は宣伝広報費にも積極的に投入していきましょう。

返済不要な寄付金や助成金・補助金も、創業期のNPO法人にとって心強い資金調達方法です。
NPOは自主財源のみで活動するのは難しいため、資金源の約3~4割を目安に、こういった外部資金で組織を支えていきましょう。
会員が増え、活動が広く認知され始めると、会費収入や事業収入も安定してきます。
運営・財政に余裕が出てくれば、新たな非本来事業の開始や、国や企業から委託事業を受けるといった方法で、さらに資金を増やすことも検討できます。

組織が大きくなると借入のハードルも下がってきます。
しかし、外部資金に頼りすぎると、いざというときに組織の維持が危うくなるため、自主財源をある程度確保しておくことは必須です。
現在の資金源のバランスは偏っていないか、定期的に見直しましょう。
財源の異なる複数種類の資金調達方法をバランスよく組み合わせ、外部資金が自主財源を大きく上回らないようにするのがポイントです。

行政によると、NPO法人には組織運営に関する情報や、マネジメントノウハウが最も重要であることが指摘されています。
資金集めに奔走する前に、戦略的な視点で事業計画を策定しておくと、借入や助成金申請がよりスムーズになります。
マネジメントや財務に強いスタッフを募集するのも、ひとつの手でしょう。
行政では情報提供や活動施設の確保支援といった、NPOに対するサポートを実施しています。
また、NPOの中間支援組織や民間企業からは情報提供のほか、資金調達支援を受けることもできます。
こういった支援を活用して、創業時の不安定な時期を乗り越えましょう。

NPOの資金調達の難しさと課題

NPOの課題点

NPO法人にとっては、営利企業のような大規模な資金調達が非常に困難であることが課題です。
内閣府の調査によると、総収入金額が1,000万円以下であるNPO法人が7~8割を占めており、5,000万円以上はたったの1割程度です。
特に、NPOの創業期は寄付や不安定な事業収入、助成金、個人からの借入に頼るしかないので、組織の急成長は難しいです。
寄付金を募るにしても、まずはNPOの認知度と信頼をある程度高めなくては、十分な資金は集まりにくいでしょう。

株式会社形態の法人であれば、まだ会社規模が小さく未上場の段階でも、ベンチャーキャピタルという投資会社から大規模資金調達を受けることが可能です。
ベンチャーキャピタルは、上場後の大きなリターンを期待して、ベンチャー企業にも積極的な資金提供を行っているのです。
一方で、非営利企業であるNPO法人は、ベンチャーキャピタルのような強力なバックアップが受けられないため、スタート段階で伸び悩みます。
そこで、NPO法人に営利組織としての性格を加えた「CIC(Community Interest Company)」という法人格が登場しています。
従来のNPO法人とは異なり、株式会社のように上場することができるので、資金調達がより容易になっています。
ですが、あくまで社会的な利益の実現が目的なのは変わらないので、投資家へのリターンは制限されます。

CICはイギリスで始まった法人形態ですが、日本でもそれに倣って「ソーシャルビジネス法人格」が、2014年に自民党の成長戦略として掲げられています。
2013年には、日本で初めての「ベンチャー・フィランソロピー(VP)」が登場しています。
VPは、ヨーロッパを中心に2000年頃から広まった投資形態で、金銭の代わりに社会的な貢献をリターンとして得ています。
NPOを支援するために、個人や企業から寄付金を募り、ベンチャーキャピタルの手法で経営サポートも実施しています。
従来は、NPOが融資を受ける際は上限数百万が平均的でしたが、VPでは最大数千万円規模の融資を受けることができます。

NPOにとってまず壁となるのが、創業時の資金調達方法です。日本初のVP「ジャパン・ベンチャー・フィランソロピー基金(JVPF)」は、一般社団法人「ソーシャル・インベストメント・パートナーズ(SIP)」と公益財団法人「日本財団」が共同運営を行っています。
初めての支援先として、特定非営利活動法人「放課後NPOアフタースクール」が、約3年間に及ぶ2,000万円規模の支援を受けています。
このように、日本におけるNPO支援の取り組みは良い方向に向かいつつあります。
従来は困難であったNPOの資金調達や経営の課題も、容易にクリアできるようになる日は近いでしょう。