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ファクタリング会社にファクタリングを申し込むと、契約書とともに債権譲渡登記の申請書への署名捺印を求められます。
債権譲渡登記とはそもそもどんなものなのでしょうか。
この記事では債権譲渡登記はファクタリングには絶対必要なのか、債権譲渡登記をすることのメリットとデメリットを中心に債権譲渡登とは何かということについて解説していきます。
債権譲渡登記とは
まずは債権譲渡登記について知っておかなければならないことを説明します。
登記とは公的機関に情報を開示することです。
つまり債権譲渡登記とは、債権が譲渡されたことを第三者が見られるように開示されることを意味します。
債権譲渡登記の目的は?
具体的には、債権譲渡登記すると、法務局にある登記簿に債権が譲渡されたことが記入されます。
ではなぜファクタリング契約の際に債権譲渡登記が必要となるのでしょうか。
債権譲渡登記を行うと、公的機関に債権の所有権を明記することができます。
そのため、登記を行った債権に関しては、ファクタリング会社が所有権を持っているということが明らかになります。
ファクタリング会社が契約に際して一番注意しているのが売掛債権の多重譲渡です。
ファクタリングを申し込んできた会社が、同時に他のファクタリング会社にも申し込んでいると、同じ債権を複数の会社に譲渡するような事態になってしまいます。
多重譲渡を防ぐために、債権譲渡登記は重要なポイントとなります。
債権譲渡登記だけで対策は十分?
債権譲渡登記をすることによって、第三者に対する対抗要件を有することになります。
対抗要件とは「法的に自分たちに所有権があると主張できる」ということです。
しかし、債権譲渡登記を済ませた時点では、第三者に対する対抗要件が成立しているとは言えません。
正確には、債権譲渡登記を行ったことを債務者(売掛先)に承認してもらって初めて対抗要件となり得るのです。
ファクタリングにおいて何かしらの契約不履行があった場合、ファクタリング会社は債権譲渡登記していることを債務者(売掛先)に通達を行います。
通達された債務者(売掛先)としては、通達が届けば承認せざるを得ません。
登記は法的拘束力を持っていますので、反論の余地はありません。承認を得た時点で、第三者への対抗要件が成立します。
なぜ債権譲渡登記をするのか?
債権譲渡登記が民法に定められたのは比較的最近で、元々は「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」として1998年に制定されました。
その後法改正を繰り返し、現在は「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」として制定されています。
そもそもこのような法律が成立したのは、ファクタリングにおける法的問題がおこるのを防ぐためです。
債権の譲渡を証明するだけであれば、ファクタリングを希望する会社とファクタリング会社の契約書でも証明自体は可能です。
しかし民間企業同士の契約書に法的拘束力はなく、債務者(売掛先)が契約書を見せられても承認をしなければならないという法的根拠はありません。
そうなると売掛債権の多重譲渡が理論的には可能となってしまうため、法的拘束力を持つ「登記」という形で債権の譲渡を証明できるように法律が整備されました。
ファクタリングにおける債権譲渡登記のメリット
ここからは「売掛債権譲渡登記を行うと、結局どうなるのか」という売掛債権譲渡登記の基本を解説していきましょう。
まずはメリットから考えていきます。
売掛債権の多重譲渡防止
ファクタリング会社にとって最大のメリットは、多重譲渡の防止です。
ほとんどのファクタリング会社は、契約の際債権譲渡登記を必須条件としています。債権譲渡登記を行うことで、仮に他のファクタリング会社に債権が譲渡されていれば、法務局の登記簿で確認することができるのです。
そうなると二重譲渡、多重譲渡という詐欺の被害に遭うことがなくなるので、ファクタリング会社にとっては非常に大きなメリットになります。
差押債権者に対する対抗要件に
債権譲渡登記は、差押債権者に対する対抗要件にもなり得ます。
例えばファクタリングを希望した会社の経営が苦しくなり、差し押さえが執行された場合、差し押さえの対象になっていない売掛債権に関してはファクタリングが可能です。
ファクタリングを契約する際、売掛債権譲渡登記が行われ、さらに債務者(売掛先)に対して通知が行われれば、売掛債権に関しては所有権がファクタリング会社にあることが証明されます。
そのため債権譲渡登記が行われた債権に関しては差し押さえの対象にはなりません。
債権譲渡登記を行わないファクタリングは存在する?
一部ファクタリング会社では、3社間ファクタリングであれば債権譲渡登記はなしで契約することがあります。
また、債権譲渡登記が可能なのは法人だけです。
そのため、個人事業主が行うファクタリング契約は債権譲渡登記がない契約となっています。
- 法人…債権譲渡登記が可能
- 個人事業主…債権譲渡登記が不可能
2社間ファクタリングと3社間ファクタリング
ファクタリング会社との契約には、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングが存在します。
2社間ファクタリング
仮にファクタリングを希望するA社、ファクタリング会社であるB社、ファクタリングで譲渡する売掛債権の債務者(売掛先)であるC社があったとしましょう。
A社とB社の間で契約するのが2社間ファクタリングです。
2社間ファクタリングの場合、A社は取引先であるC社にファクタリングの事実を知られることなく契約できます。
C社は通常通りA社に売掛金を支払い、入金があった時点でA社はB社に必要な金額を振り込みます。
これが2社間ファクタリングの流れです。
3社間ファクタリング
一方A社、B社、C社の3社間で結ばれるのが3社間ファクタリングです。
3社間ファクタリングの場合、A社は取引先であるC社にファクタリングをしていることがを知られてしまいますが、その分ファクタリング契約の手数料が安くなります。
また3社間ファクタリングの場合、C社は直接B社に入金します。
3社間ファクタリングの場合、売掛債権に関わるすべての会社が参加する契約になるので、債権譲渡登記なしでも契約してくれるファクタリング会社が存在するということになります。
ファクタリングにおける債権譲渡登記のデメリット
債権譲渡登記にはメリットがあるのと同時に、デメリットも存在します。
デメリットは主にファクタリングを希望した会社に発生するので、ファクタリングを申し込む場合は、デメリットを把握したうえで申し込むようにしましょう。
取引先からの信用問題
登記とは情報を公示することなので、債権譲渡登記を行うと、登記の情報は第三者も見ることが可能になります。
つまり取引先が法務局の登記簿を閲覧すれば、あなたの会社が債権譲渡したことを確認することができます。
債権譲渡しているということは、ファクタリングを利用している可能性が高いということを意味します。
ファクタリングを利用しているということは、それだけ資金繰りが厳しい状態ということを印象付ける可能性がありますので、取引先に悪印象を与えてしまう可能性があることが、第一のデメリットといえます。
とはいえわざわざ法務局で登記簿を確認してから契約する取引先は多くはありません。
新規で契約する大きな企業であれば、確認する可能性はありますが、基本的には気にする必要はあまりないでしょう。
ただし、取引先との入出金のやり取りで何らかの齟齬があった場合、取引先が登記簿を確認する可能性があります。
そのような事態になると、まったく問題がないとはいえませんので、一応気になる部分ということでデメリットと考えておきましょう。
銀行からの融資審査に影響がある
銀行からの融資を希望する際にもデメリットがあります。
銀行に融資を申し込むと、会社の経営状況が審査されますが、審査の際多くの銀行は登記簿までキッチリと確認します。
確認した際債権譲渡登記があったらどうなるのでしょうか。
もちろんファクタリング自体は借金ではありませんので、ファクタリングの事実が直接融資に影響を与えることはありません。
ただし、経営状態が正常であるかどうかの判断には大きく影響するはずです。
近く銀行などの金融機関からの融資を考えている場合は、債権譲渡登記をするのはデメリットと考えてよいでしょう。
登記には手数料などが必要
法務局に債権譲渡登記を行うには、決まった書式に必要な事項を記入し申請する必要があります。
多くの場合申請作業はファクタリング会社から依頼を受けた司法書士が行うので、司法書士に対する手数料が必要になります。
さらに登記には税金がかかります。
- 債権譲渡登記(5,000個以下) 7,500円/件
- 債権譲渡登記(5,000個以上) 15,000円/件
司法書士への手数料や免許税に関しては、基本的にファクタリングを希望する会社の負担になるので、ファクタリング契約の手数料プラス登記手数料が必要になります。
債権譲渡登記が5,000個を越えるケースは稀なので、5,000個以内で考えると1件あたり30,000円~40,000円程度の手数料が必要です。
まとめ
多くのファクタリング契約において、債権譲渡登記は必須ともいえる手続きです。
債権譲渡登記を行うことで、債権の所有権が法的に認められるので、ファクタリング会社には大きなメリットがある手続きといえます。
一方ファクタリングを希望する会社にとっては、取引先や金融機関など第三者も確認できるようになるため、信用問題や融資審査においてデメリットになることがあります。
しかし、ほとんどのファクタリング契約において債権譲渡登記が必須である以上、登記は避けられないと考えておきましょう。
登記なしで契約してくれるファクタリング会社もありますが、多重譲渡のリスクがあるため、手数料が高くなっている場合があります。
それが今のあなたの会社にとってメリットになるかどうかを考えてから申し込みをしましょう。