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投資のためにファクタリングを利用できる?メリット・デメリットは?

売掛債権を売却し現金化できるファクタリングは、会社の資金調達の方法として活用されています。
事業の成長や拡大のための資金をファクタリングで確保しようと考える経営者は多いのではないでしょうか。

この記事では、ファクタリングは投資のための資金調達手段として利用するのは得策なのかという点について解説していきます。
仕組みをはじめ、利用時のメリットやデメリット、投資対象としてのファクタリングも説明しますので、ぜひご一読ください。

ファクタリングの仕組みを解説

ファクタリングの仕組みを解説

ファクタリングとは、まだ入金されていない売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に買い取ってもらい、債権を早期に現金化するサービスのことです。

手数料はかかりますが、資金調達を早急に行いたい会社の心強い味方となります。

売掛債権をファクタリング会社に売却することで、入金予定日を待たずに現金化できる

ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に売却し、本来の入金日より早く現金を受け取ることができるサービスです。
タイムラグを減らして現金化できるため、会社の資金繰りが厳しい、または融資を受けることが難しい会社にとって、強力な資金調達の方法となります。

ファクタリングには、2社間(債権者とファクタリング会社)ファクタリングと3社間(債権者とファクタリング会社、債務者)ファクタリングがあり、基本的には以下のようなプロセスで行われます。

2社間ファクタリングの場合
  1. ①商取引などで債権者に売掛債権が発生

  2. ②債権者が売掛債権をファクタリング会社に売却し現金化

  3. ③債権者が売掛債権を回収

  4. ④回収した売掛債権(代金)をファクタリング会社に引き渡し

3社間ファクタリングの場合
  1. ①商取引などで債権者に売掛債権が発生

  2. ②債権者が債務者に対して債権譲渡の通知(承諾)

  3. ③ファクタリング会社が債権者へ債権の買い取り代金を引き渡し

  4. ④ファクタリング会社が債務者から債権代金を回収

ファクタリングには手数料が発生するため、入金予定の満額は受け取れない

ファクタリング会社に売却した債権は、手数料を差し引かれて支払われるため、債権の金額を満額で受け取ることはできません。

2社間ファクタリングか3社間ファクタリングかで手数料は異なりますが、3社間ファクタリングの場合債権金額の1%~10%、2社間ファクタリングの場合10%~30%程度といわれています。

手数料は、2社間より3社間ファクタリングの方が安くなるのは、3社間で行う取引は、債権者・ファクタリング会社・債務者の3社が関わっており、債権の譲渡を債務者側に通知したうえで手続きが行われるため、未回収になるリスクが少ないからです。

3社間ファクタリングでは債権の譲渡に債務者からの承諾が必要になりますが、可能な場合は手数料が安い3社間ファクタリングを利用するとよいでしょう。

ファクタリングの手数料

  • 3社間ファクタリング…債権金額の1%~10%
  • 2社間ファクタリング…債権金額の10%~30%

借金ではないため、債務状況や業務実績と関係なく利用できる

資金調達と聞くと銀行などからの融資が思い浮かびますが、ファクタリングは、債権者が持っている売掛債権(=資産)をファクタリング会社に売却する行為なので、借金(借入金)ではありません。
したがって、債権者の会社の債務状況や業績には関係なく利用できます。

また保証人や担保が不要なので、それらを用意する手間を省くことができます。

銀行融資などと比べると審査が緩く利用しやすい

ファクタリングは債権の売買を行うものなので、債権を持っている会社の返済能力よりも、債務者(売掛先)の信用度(債権が確実に存在しているか、回収できる相手か等)を重視して審査が行われます。

極端な話をすると、債権を保有している会社が債務超過していたり、赤字になっていたりしても、審査には影響がありません。
ただし、銀行からの融資などと比べると高コストな資金調達方法なので、利用する際はよく検討する必要があります。

投資のためにファクタリングを利用するメリット

投資のためにファクタリングを利用するメリット

スピード勝負の投資の場面ではファクタリングの効果は高くなります。

また、銀行に融資を断られた会社が投資資金を確保したい場合も有効です。

投資したいタイミングで早急に対応が可能

ファクタリング会社によりますが、売掛債権は平均で2日~4日、最速で即日現金化することができます。

そのため、審査に時間がかかる銀行融資を待てない場合やスピーディーに事業を進めたい場合は、ファクタリングを利用することでチャンスを逃さずに投資することができます。

借入金ではないので返済が不要

ファクタリングは「借入金」ではなく、あくまで「資産の売却」であるため、そもそも「返済」という考え方はありません。

2社間ファクタリングの場合は、売掛債権の入金日に得たお金をファクタリング会社に「送金」することで取引は完了します。
したがって、投資資金の融資を断られた場合や追加の借入ができない会社であっても、売掛債権の出所が確かであれば資金調達ができます。

また、借入金は、貸借対照表の負債の部に表示されますが、ファクタリングは資産の部にはいるので、財務諸表の状態がよくなるというメリットもあります。

投資のためにファクタリングを利用するデメリット

早急に投資資金を調達するためにファクタリングを利用するのは有用ですが、キャッシュフローに悪影響を与え、手数料が高いというデメリットがあります。

ファクタリングによる投資のための資金確保を検討する際は、リスクとリターンをよく考えてから実行する必要があるでしょう。

ファクタリングは「手数料が必要な支払い前倒しシステム」のため、将来的なキャッシュフローに悪影響を及ぼす可能性がある

設備投資等の資金調達は、融資などを利用して「長期・低金利」で行うことが基本です。

ファクタリングを使うと、一時的なキャッシュフロー(キャッシュイン)は改善されますが、手数料分のキャッシュアウトが発生します。
多用すると、長期的には会社の資金繰りに悪影響が出る可能性があります。

手数料が通常の借入以上に高額となるケースがほとんどのため、結果的に損をする

ファクタリングの手数料は銀行融資等の金利に比べると高額です。

銀行融資の年利は1%~10%程度ですが、ファクタリングの手数料を年利に換算すると10%~高ければ数百%となります。

したがって、ファクタリングだけで資金調達をした場合、手数料分も含めて投下資金を回収する(利益を得る)必要があるため、無理を強いられることがあります。

投資が失敗に終わった場合のリスクが大きい

投資が万が一失敗してしまった場合、自己資金であれば投下した資金分だけが損失となりますが、ファクタリングを利用した場合、投下した資金+手数料分を損失として計上することとなります。

手数料率の高さが会社へのダメージを増大させる原因となるため、ファクタリングで投資資金を調達して失敗した際のリスクは大きくなります。

投資商品としてのファクタリング

投資商品としてのファクタリング

ここまでは、ファクタリングを利用する視点から紹介してきました。

この項目では、投資商品としてのファクタリングを説明します。
成長中の業界なので、投資家からの注目度は高くなっています。

ファクタリング業界はまだ成長が見込める業界

世界のファクタリング市場は、2018年~2022年にかけて13.28%のCAGR(年平均成長率)で成長すると予測されています。
(参考:https://www.gii.co.jp/report/infi353162-global-factoring-market.html )

まだまだ成長過程にある業界なので、投資商品として今後注目されていくでしょう。

資金を欲しているファクタリング会社は少なくない

経済産業省中小企業庁も「売掛債権の利用促進について」でファクタリングの普及につとめているところです。
(参考:https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/urikake_panhu2.htm )

政府が推し進めていることもあり、ファクタリングの国内市場は発展し続けています。
資金を欲しているファクタリング会社も多いため、投資対象としての魅力があります。

高い利益率が見込める

ファクタリング会社への投資は、ハイリターンが狙えます。

成長業界であるという理由もありますが、例えばファクタリングで発生した利益が5%、投資をした人への分配が1%だとすると、出資額にもよりますが多くのリターンを得ることができます。

ファクタリングと投資の関係は?

ファクタリングと投資の関係は?

ファクタリングは、「将来得ることができる現金を割引された状態で手に入れている」ことを指しています。
つまり、割引された(手数料)部分で費用が発生していることに他なりません。

したがって、投資目的の資金調達方法としては不向きであるといえます。
ファクタリングを利用する際は、状況をよく見てから判断した方がよさそうです。

ファクタリングの手数料は、年利に換算するとかなり高額である

「3. 投資のためにファクタリングを利用するデメリット」でも触れていますが、ファクタリングの手数料を年利に換算すると、10%~数百%となることがあります。

そのため、投資資金の調達のためにファクタリングを多用することはあまり現実的ではありません。

 ファクタリングは継続して利用するより、必要なタイミングに単発で利用するのがベスト

ファクタリングは継続利用に向いていません。

ただし、どうしても資金が足りずにスポットで活用するのは、ある程度実用的な手法といえます。

急を要する投資ができた場合、他の方法がないのであれば利用する価値はある

投資を行うまでの時間的な余裕がない場合や、資金ショートしそうな場合にその場をしのぐことが目的であれば、ファクタリングを利用する価値はあるといえます。

例えば、「今すぐ資金を投下すると確実に30%の利益が出る」投資ならば、ファクタリングの手数料が20%であっても、現金を確保して投資を行うべきでしょう。

投資資金のためにファクタリングを利用する際は、投資で得られる利益とファクタリングのコストを天秤にかけて考える必要があります。

基本的に投資は自己資金もしくは銀行などからの借入金で行う方がリスクは少ない

これまで説明した内容から、ファクタリングは投資資金の調達には不向きであることが理解できたと思います。

リスクを抑えた投資を行うためには、ファクタリングの利用は可能な限り避け、自己資金や銀行からの融資でまかなう方が賢い選択といえます。

まとめ

この記事をまとめると、以下のとおりとなります。

  • ファクタリングとは、売掛債権を売却して現金化すること。
  • 現金化する際に、ファクタリング会社に手数料を支払う必要がある。
  • ファクタリングには2社間と3社間があり、3社間の方が手数料は安い。
  • 投資資金の調達手段としてファクタリングを利用する場合は、リスクやコストの高さ考慮して利用するかどうか決める必要がある。
  • ファクタリングは投資対象としての成長が見込まれている。

ファクタリングは、即効性のある資金調達方法としては有効ですが、手数料のコストが高くなるため多用は避けるべきです。

また、ファクタリングを投資資金の調達という面から見れば、「最後の手段」として利用するべきです。
この記事をヒントにして、ファクタリングを賢く利用しましょう。