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売掛債権を譲渡することで、取引先から入金されるより早く確実に現金を手にすることができるファクタリング。
売掛金が入金されたら、その売掛金はファクタリング会社に支払わなければなりませんが、もしファクタリング会社にお金を支払えない状況になったら、どうすればよいのでしょうか。
ファクタリング会社にお金が返せない状況になるのはどのようなケースが考えられるのか。また、そうなった場合の対処法について考えてみましょう。
ファクタリングでどうなったら返済できなくなるのか?
まずはファクタリングを利用したけれど、ファクタリング会社にお金を返せなくなってしまった。
この状況がどうして起こったのか考えてみます。
取引先から入金されたものをそのままファクタリング会社に返せばよいだけなので、普通に考えれば返せなくなるような状況は起きません。
よって、ファクタリング会社に返せなくなるパターンは「取引先から入金されなかった」か「入金されたのに使い込んでしまった」かのいずれかでしょう。
- 取引先から入金されなかった
- 入金されたのに使い込んでしまった
それぞれどのようなケースで起きるのか考えてみます。
返せないケースは2社間ファクタリングのケース
ファクタリングには、ファクタリングを希望する企業とファクタリング会社の2社間で契約する2社間ファクタリングと、その2社に取引先企業を加えた3社間ファクタリングが存在します。
3社間ファクタリングの場合、取引先企業が直接ファクタリング会社に入金するので、ファクタリングした金額が返せないという状況は起こり得ません。
万が一起こったとしても、それは取引先企業が支払わなかっただけで、ファクタリングを希望した企業には非がないので問題とはなりません。
問題は2社間ファクタリングです。
2社間の場合、取引先が売掛金を入金するのは、ファクタリングを希望した企業となります。
入金された分をそのままファクタリング会社に支払えば問題ありませんが、入金できないという状況も起こり得ます。
取引先からの入金がなかった場合
まず考えられるのは、そもそも取引先からの入金がなかった場合です。
取引先の経営状況次第では、売掛金の支払いが遅れるというのは珍しい話ではありません。もちろん2~3日程度であれば大きな問題にはなりませんが、あまりに遅れるようだと問題になってしまいます。
ファクタリングを利用する際は、売掛債権が本当に支払われる売掛金かどうかを見極めてから利用する必要があるでしょう。
入金されたお金を使い込んでしまった場合
最悪のケースが、入金されたお金をファクタリング会社へ返す前に他のことに使ってしまうというケースです。
他の取引先への支払いを優先してしまったり、銀行からの借入金の返済に充てたり、資材や材料を買い付けるための資金に充てるなどといった、当初の予定とは違う目的に使ってしまう場合があります。
会社の経営状況によっては従業員への給与の支払いが遅れていて、給与支払いを優先しなければいけない場合もあります。
従業員への給与支払いや材料費などは、会社の経営に直結する問題です。
資金が足りない状況で目の前に現金が入ってきたら、多くの経営者はいけないこととは思いながらも現金に手を付けてしまう可能性があります。
ファクタリングのお金を返せない場合どうなるのか?
このようにファクタリングで売掛債権を譲渡したものの、売掛金を手にした後にファクタリング会社に返せないということは起こり得ます。
では、実際に支払い期日に返せなかった場合どうなるのかを考えておきましょう。
取引先に債権譲渡通知書が送付される
多くのファクタリング会社は期日までに入金がなく、催促の連絡をしても支払いがないようであれば、まず取引先(売掛先)の企業に「債権譲渡通知書」を送付します。
2社間ファクタリングを利用する場合のメリットとして、取引先(売掛先)に知られることなく、入金日前に現金を手にすることができるという点が挙げられますが、債権譲渡通知書を取引先に送付されると、売掛先にファクタリングを利用していることが知られてしまいます。
債権譲渡通知書によって、あなたの企業はファクタリングを利用するほど経営状態が厳しいということが取引先に知られてしまいます。
さらにファクタリングにおいて、返すべきお金を返せないほど切羽詰まった状態であることも知られるのです。
ほとんどの企業はこのような経営状態の厳しい会社とは取引をしたくないので、今後の取引に悪影響を与える結果となってしまいます。
ただ債権譲渡通知書を送付されること自体は、お金が返せないことの解決策にはなりません。
返済すべき金額が残っている上に、経営が悪化していることを知られてしまいます。
法的措置を取られる
実際に返せていないお金に関しては、債権譲渡通知書の送付では解決しません。
金銭の返済に関しては、法的措置を取られるでしょう。
法的措置が取られたら、大きなポイントとなるのが「債権譲渡の登記」です。
ファクタリング会社が法的措置を取る場合、重要になるのが「売掛債権の所有権をハッキリさせる」ことです。
売掛債権の所有権はどこにあるのかを公的に証明するひとつの手段が、債権譲渡の登記です。
ファクタリングの契約をする場合、多くのファクタリング会社は「債権譲渡通知書」への署名捺印と同時に、債権譲渡の登記の手続きも行います。
債権譲渡の登記が行われると、第三者でも売掛債権の権利があなたの会社からファクタリング会社に譲渡されたことが確認できるようになります。
債権譲渡登記があれば、裁判になったとしてもファクタリング会社の主張が全面的に受け入れられる可能性が高くなるのです。
ファクタリングで返せない時に検討する対処法
ファクタリングを利用して手にしたお金を期日までに返せないとなると、取引先からの信頼が得られなくなるばかりか、裁判で訴えられるということになりかねません。
こうなると後々の事業にも大きな影響があり、最悪倒産という可能性も出てきます。
では、ファクタリングでお金を返せない時にはどうすればよいのでしょうか。
分割払いでの支払いは検討できる?
まとめて返すのが難しい場合、複数回に分けて支払うという方法を考える経営者の方もいるかと思います。
しかしファクタリングは借金ではないため、基本的に分割による返済は認められません。
ファクタリングは、あなたの会社が持っている売掛債権をファクタリング会社に譲渡することを意味していますので、正確に言えばお金を借りているわけではありません。よって、ファクタリング会社との契約においては貸金業法の適用外となります。
つまり、利息がついたり、分割払いをしたりという理屈は通用しない契約ということになるのです。
ファクタリング会社に譲渡した売掛債権の期日にお金を支払えないということは、「業務上横領」ということになります。
分割払いに応じてくれる場合もある?
ファクタリングは貸金業ではないので、基本的に分割払いという考え方は通用しません。
しかし、ファクタリング会社の中には、分割払いに対応してくれる会社もあります。
それまではファクタリングという債権の売買契約だった契約を、損害賠償金の支払いという契約に変更することで分割払いに応じてくれる場合もあります。
基本的に、ファクタリングの契約には分割払いも遅延損害金もありません。
そこでファクタリング会社が、ファクタリング契約の不履行があった場合、ファクタリング契約をした相手の会社に損害賠償金を請求します。
損害賠償を請求された会社が損害賠償に応じ契約を変更すれば、分割払いが可能となるため、ファクタリングで返すべき金額を分割払いにできるという仕組みです。
損害賠償金を分割払いにすると、金利が非常に高くなるケースがほとんどです。
例えば120万円の売掛債権を84万円(手数料30%)でファクタリングし、返せなかったために損害賠償金を1年間の分割払いにしたとしましょう。
この場合、毎月の返済金は100,000円です。そのうち70,000円が元本で残りが金利になります。
これを年利に換算すると43%超の高金利となり、通常の融資とは比較できないほどの大変な金利を取られることになります。
基本的にファクタリングは「支払う」しかない
ファクタリングは借金ではないため、支払い日に全額支払えないと業務上横領、もしくは詐欺罪で刑事告訴されるか、損害賠償金の分割払いという名目の超高金利による返済を求められることが考えられますし、取引先からの信用も失ってしまいかねません。
こういった事態を避けるためには、「期日に満額を支払う」以外の選択肢はありません。
期日に満額を支払うために、できることを考えましょう。
支払いの優先順位を考える
まずは「支払いの優先順位」を考え直しましょう。
通常の経営状態であれば、支払いの優先順位は単純に請求日の順ということになります。しかし、請求日の順に支払いをしているとファクタリングのお金を返せないというのであれば、優先順位を変える必要が出てきます。
会社にとって重要な支払いを優先して行うことを考えれば、ファクタリングの支払いはかなり上位に来ます。
逆に優先順位を落とせるのは、銀行融資などの返済です。返済自体はしなければいけないものですが、銀行融資の場合は最悪1ヶ月や2ヶ月遅れたとしても、いきなり告訴とはなりません。
こういった優先順位を下げられるものは順位を下げて、なんとかファクタリングの支払いができるだけの予算を用意しましょう。
弁護士に相談する
間に弁護士に入ってもらう方法も考えられます。
弁護士に依頼した場合のメリットは、ファクタリング会社との交渉を自分で行う必要がなくなり、法の専門家である弁護士に任せられるということです。
ファクタリング会社は期日に払えないトラブルに関する対処法を熟知しています。
そんなファクタリング会社に知識の少ない経営者が交渉をしてもまず有利な結果は得られません。そこで法の専門家である弁護士を頼るという選択肢が出てくるのです。
弁護士に交渉を依頼した場合、「分割払い交渉」、そして「減額交渉」、「和解交渉」などの対策案を提示し、よりよい解決方法を見付けてくれます。
デメリットとしては、弁護士費用が必要になることです。
その費用が弁済金に上積みされることを押さえておきましょう。
代物返済を提示する
期日までに現金は用意できないものの、それと同等の価値がある代わりのもので支払う「代物返済」という方法もあります。
会社で所有している不動産や資産、株券などで返済するという考え方です。
もっともポピュラーなのは、別の売掛債権を譲渡することで支払うケースでしょう。
つまり、もう一度別の売掛金でファクタリング契約を結び、別のファクタリング契約で得た現金で返済するという方法です。
ただし、代物返済はファクタリングの連鎖に繋がり、長く続けているとどんどん経営状態が悪化しかねませんのでご注意ください。
準消費貸借契約に切り替える
ファクタリング会社は貸金業者ではありません。
貸金業の免許も持っていないことが多いため、基本的に貸借契約を結ぶことはできません。
しかし、「準消費貸借契約」と呼ばれる契約であれば、貸金業者以外でも貸借契約を結ぶことが可能です。
そして、準消費貸借契約の中で分割払いを設定すれば、ファクタリングのお金も分割払いで返すことができます。
準消費貸借契約に切り替えるのは、ファクタリング会社にとっては旨味がひとつもありません。
そのため実際に切り替えを行う際は、分割にしてさらに利息や遅延損害金の設定を行うのが通常の形になります。
できれば間に弁護士に入ってもらって契約するのが良いでしょう。
まとめ
ファクタリング契約は借金ではありません。
借金ではないため、信用情報に傷はつきませんし、銀行などからの融資が難しい会社でも契約できます。
一方借金ではないため、期日に返せないということは通用しません。
借金の場合、返済が遅延しても遅延損害金や利息などが発生するため、すぐに問題が発生することはありませんし、分割返済も可能です。
しかしファクタリングは借金ではないので、支払いが遅れることは許されないのです。
ファクタリングは非常に使いやすく、また急場をしのぐには非常に便利なシステムです。
しかし、ファクタリングの利用には十分な知識が必要となります。
ファクタリングで資金調達を行う際は、後々の返済計画までしっかりと立て、経営自体に影響が出ないような形で利用するよう心がけましょう。