個人事業主の資金調達方法は、法人の場合と異なり、選択肢が限られていると思われがちですが、よく探してみると開業時でも利用できるお得な融資制度は存在します。
個人事業主におすすめの資金調達方法をはじめ、融資の審査を通りやすくするコツや、資金調達・経営に関して頼りになる相談先も併せて紹介します。

開業時に利用できる資金調達方法一覧

日本政策金融公庫
「日本政策金融公庫」とは、日本政府が100%出資している金融機関で、日本経済成長・発展や地域活性化への貢献を担っています。
公庫ならではの高い金融力によって、中小企業や小規模事業者向けの融資を提供しています。
それに加え、コンサルティングやマッチング、関連団体との連携によるによる経営支援も行っています。

日本政策金融公庫の事業は、「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」の3チームに分かれています。
このうち、個人事業者向けの融資を行っているのが、「国民生活事業」です。
融資先企業は約80万件を超えており、平均融資残高は698万円となっており小口融資がメインです。
8割以上が無担保・保証人なしで利用されており、気軽に利用しやすい融資です。
個人事業者が利用できる融資制度には、「新創業融資制度(限度額4,800万円)」や、「新規開業資金(限度額7,200万円)」などがあります。

日本政策金融公庫の「事業資金相談ダイヤル(0120-154-505)では、経営・事業資金調達に関する相談を受け付けています。
ここに電話すると融資について詳しい話を聞くことができるので、まずは電話で相談してみましょう。

メリット
  • 低金利で融資を受けられる
  • 担保や保証人が不要
  • 融資条件が緩く、借りやすい
  • 返済期間が長く、長期資金を調達しやすい
  • 他で融資を受ける際に有利になる
デメリット
  • 所得税など税金を完納していなければ利用できない
  • 借り入れまで約1ヶ月かかる

補助金・助成金

補助金・助成金とは、国や地方自治体が事業を支援するために給付するお金のことで、返済が不要の資金調達方法です。
その多くは中小企業が対象ですが、個人事業主向けの制度もあります。

補助金は、経済・地域活性化等に資するために給付されるお金で、設備投資や宣伝広告費、研究開発費といった名目で申請できます。
事業計画書をもとに審査が行われるため、必ずしも給付されるとは限りません。

助成金は、雇用・労働環境の改善等を目的として給付されるお金です。
従業員の教育や、就業規則の改善といった条件を満たしていれば、高い確率で給付されます。
ただし、給付額は数百万円以内で、労働環境整備によるコストで相殺されるため、事業資金に回せる可能性はほとんどありません。

また、いずれも事業実績を報告した後で入金される場合がほとんどなので、今すぐに資金調達したいときには利用できません。
ある程度資金に余裕があるときの補助として利用する制度です。

個人事業主でも申請できるものとしては、以下のような制度が挙げられます。

  • 創業補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 人材開発支援助成金
  • トライアル雇用奨励金

中小企業庁の起業応援サイト「ミラサポ」では、補助金・助成金制度を探すのに便利なサービスを提供しています。
地域ごとに様々な制度があるので、「個人事業主」といったキーワードで探すか、エリアや機関別に絞って検索してみましょう。

メリット
  • 返済不要である
  • 制度の選択肢が多い
デメリット
  • 補助金申請は審査を通過する必要がある
  • 助成金の給付額は少ない
  • 事業が終了してから入金されることが多い

身内や友人知人からの借金

知人からお金を借りる
自己資金が少ないと融資に影響が出るため、親族や友人・知人からの借金を検討する場合もあるでしょう。
親や配偶者など、身近な親族からの借金である場合、金銭の贈与とみなされて贈与税がかかる可能性があります。
借入金として認められるには、親族間といえども「金銭消費貸借契約書」を作成し、資金貸付契約を交わしておきましょう。

その際、資金使途として「事業資金(設備投資や運転資金)」であること、事業規模に応じて適正な金額であるかどうか、を明確にする必要があります。
また、金銭の受け渡しや返済の記録は、通帳上に残しておくことをおすすめします。

「金銭消費貸借契約書」の他、家族間の借金であれば「借用書」を作成するという方法もあります。
借用書の署名は借主だけで良く、手軽に作成することができます。
書類には、以下の内容を記載しましょう。

  • 契約日
  • 借用金の金額
  • 利息や返済方法

利害関係の絡まない親しい間柄であれば、利息や遅延賠償金について定める必要はありません。
ただし、利息分に対して贈与税が発生する可能性があります。

メリット
  • 利息や保証人なしでお金を借りられる
  • 借り入れの条件や返済方法の融通が利きやすい
デメリット
  • 贈与税がかかる可能性がある
  • 金銭トラブルで人間関係が壊れるリスクがある

信用保証協会による保証付き融資

金融機関から融資を受ける際、「信用保証協会法」に基づく公益法人である全国信用保証協会連合会が、保証人になってくれます。
保証人を取ることで取引実績の浅い個人事業主であっても、担保なしの融資を受けやすくなります。
全国に300万社以上存在している中小企業・小規模事業者のうち、約140万企業以上が利用している資金調達方法です。

保証付き融資を受ける条件として、信用保証協会に対し、所定の信用保証料(保証料の0.5~2%)を支払う必要があります。
信用保証料は、融資期間で按分して経費にすることができます。

個人事業主の場合、連帯保証人をつける必要はなく、返済が滞ったら信用保証協会が立て替えるという仕組みです。
返済が完了するまでは、他の金融機関の融資は利用できないので注意しましょう。

申込みをする際、多くの場合は取引中の金融機関が窓口になります。
金融機関から申し込めば、信用保証協会の窓口に行く必要はありません。
申込み書類は銀行の担当者が作成しますが、会社の状況を正確に把握してもらう必要があるので、付き合いの長い金融機関に申し込むことをおすすめします。
保証付き融資で返済実績を積めば、プロパー融資(保証なし)の審査に通りやすくなります。

メリット
  • 担保や連帯保証人が不要
  • 公的機関が保証人になることで融資のハードルが下がる
  • 金利が安くなることがある
  • 融資枠が増える可能性がある
デメリット
  • 信用保証料が加算される
  • 審査に時間がかかる(約1ヶ月)

信用金庫・信用組合

信用金庫
信用金庫・信用組合は、非営利・相互扶助を目的とした協同の金融機関で、中小企業や個人事業主に対して手厚いサポートを提供しています。
信用金庫と信用組合は、どちらも非営利の共同組織ですが、根拠法や業務範囲といった点で異なっています。

信用金庫は、「信用金庫法」に基づき基本的に会員を対象に融資を行っていますが、例外もあります。
信用組合は、「中小企業等協同組合法」のもと地域社会の繁栄を目指している組織です。
原則として組合員を対象に融資を行っていますが、信用金庫と同様に制限付きで会員以外でも融資を受けられます。

個人事業主のような小規模事業者に対しては、営利組織の銀行より信用金庫・信用組合のほうが丁寧で細やかな対応が期待できます。
また、会員・組合員に加入しておくと融資の優遇がある他、経営支援や経営者間の交流・情報交換といったメリットがあります。

日本政策金融公庫の審査に落ちてしまった場合でも、信用金庫・信用組合に相談すると、融資を受けられる可能性があります。
ただし、金利は比較的高めになり、審査は2ヶ月ほどかかります。

メリット
  • 銀行より資金を借りやすい
  • 丁寧で細やかなサポートが受けられる
デメリット
  • 日本政策金融公庫と比較すると、金利がやや高い
  • 審査に時間がかかる(約2ヶ月)

ビジネスローン

ビジネスローン
ビジネスローンとは、銀行・消費者金融から融資を受ける資金調達方法のひとつです。
日本政策金融公庫や保証付き融資、プロパー融資などの審査に落ちてしまっても、ビジネスローンなら個人事業主でも審査に通る可能性があります。

ビジネスローンは個人でも法人でも利用できるもの以外に、法人専用、個人専用のローンもあります。
個人事業主におすすめなのは、個人専用のビジネスローンです。
個人・法人両方に対応しているローンは、法人が優先されるので注意しましょう。
銀行ビジネスローンは法人専用が多いので、大手・中小消費者金融のローンから選ぶと良いでしょう。

公的機関や銀行による審査は時間がかかりますが、ビジネスローンなら最短即日で資金調達できるという大きな強みがあります。
さらに、個人で利用する場合には連帯保証人をつける必要がありません。

また、プライベート資金としても利用できる柔軟性がある他、総量規制の対象外になるというメリットがあります。
総量規制とは個人向け融資で借入総額が制限される規制ですが、個人事業主であることを証明すれば、制限なく借り入れることができます。

ただし、ビジネスローンは金利が高いため、長期に渡る資金繰りに利用すると、利息の負担が大きくなってしまいます。
なので、そのメリットを活かし、緊急の場合のつなぎ資金として利用するのがおすすめです。

メリット
  • 公的融資や銀行融資より審査に通りやすい
  • 最短即日で資金調達できる
  • 保証人が不要
  • プライベート資金にも利用できる
デメリット
  • 金利が高く、長期の資金繰りには向かない
  • 法人向けのローンは利用できない
  • 業歴1年未満だと申し込めない

カードローン

カードローンには、「個人向けカードローン」と「ビジネスカードローン(事業者カードローン)」があります。
「個人向けカードローン」は、本来私的利用のためのローンですが、こっそりと事業資金に利用している個人事業主もいます。
しかし、これは規約違反になってしまうため、資金調達方法としては推奨できません。
事業資金への利用が認められている「ビジネスカードローン」であれば、問題ありません。

ビジネスカードローンは、本人確認書類(免許証やパスポート)や、収入証明書類(確定申告書や納税証明書)があれば申し込めます。
審査書類として確定申告書を使う場合、税務署の受付印が押されている必要があります。
その他、事業計画書や請求書類、業種によっては営業許可証を求められることがあります。

ビジネスカードローンのメリット・デメリットは、ビジネスローンとほぼ同じです。
限度額の範囲内であれば、全国のATMやコンビニから自由に出し入れできます。
特に、プロミスの「自営者カードローン」は、年会費無料で30日間の無利息期間があり、おすすめです。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却する資金調達方法です。
個人事業主には対応していない業者が多いですが、「ファクタリング東京」や「資金調達プロ」など、一部の業者は相談に乗ってくれる可能性があります。
会社によっては、10万円からの少額取引でも柔軟に対応してくれます。

ファクタリングは、事業者の経営が苦しくても、優良な取引先の売掛債権を保有していれば、審査に通りやすくなります。
ただし、取引先の同意が必要な「3社間ファクタリング」を指定される可能性があります。

個人事業主のままだと信頼度が低いので、法人格を取得するとか、取引証拠となる資料を揃えるなど、万全な準備が必要です。
取引先に入金サイトの短縮を持ちかける、税理士に資金調達の相談をするなど、自社以外の協力を仰ぐことで、より信頼性を高められます。

メリット
  • 優良な売掛債権を保有していれば審査に通りやすい
  • 最短即日で対応できる
デメリット
  • 個人事業主は利用できない業者が多い
  • 手数料(5~20%)がかかる

真っ先に検討するべき資金調達方法は?

上記で紹介してきた資金調達方法の中で、どれを選べば良いのか迷ったら、まず「日本政策金融公庫」を検討することをおすすめします。
なぜなら、日本政策金融公庫では個人事業主にとって以下の大きなメリットがあるからです。

  • 小規模事業者向けの融資制度があり、借り入れしやすい
  • 個人事業主に対するサポートが充実している
  • 銀行や消費者金融より金利が安い(年利1~2%)
  • 日本政策金融公庫の利用実績を作ることで信用が高まる
  • 長期間借りられる(運転資金は7年以内、設備資金は15年以内に返済)

決して審査が簡単なわけではありませんが、実現性の高い事業計画をアピールできれば、個人事業主でも優遇してくれます。
創業から間もない事業であれば、日本政策金融公庫の以下の制度が利用できます。

新創業融資制度

「新規開業資金」や「女性・若者/シニア起業家資金」といった、各融資制度を利用する場合に適用される特例措置です。
担保・保証人は原則不要で、3,000万円(うち運転資金1,500万円)を限度に、事業開始に必要となる資金を融資してもらえます。
ただし融資条件として、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を準備する必要があります。

中小企業経営力強化資金

日本政策金融公庫の融資制度の中でも、特に金利が安くなる制度で、新創業融資制度と同様に無担保・無保証人で借り入れできます。
融資限度額7,200万円のうちの2,000万円以内を無担保・無保証人で借りる場合は、特別金利が適用され2.06~2.35%になります。
さらに、「創業支援貸付利率特例制度」を利用すると、本来の金利から0.2%差し引いてもらえます。

他の制度とは異なり、自己資金ゼロで融資を受けることができるのも、大きなメリットです。
なので、資金力のない個人事業主でも、創業時から有利にスタートを切ることができます。

この制度を利用するには、認定支援機関の融資専門家に相談し、協力してもらうことが必須です。
認定支援機関とは、事業者を支援することを目的とした国に認定された機関で、その多くは税理士事務所です。

融資専門家にアドバイスを受けながら、事業計画書を作成していきましょう。
事業計画書の他、借入申込書や創業計画書といった書類を準備します。
必要書類を提出し次第、日本政策金融公庫の担当者と面談するとともに、現地調査も実施されます。
書類や面談による審査の結果、融資の可否が決定されます。

認定支援機関では事業計画作成のサポートに加え、融資確定後も経営支援を行っています。
融資を受けてから2年間は、「事業計画進捗報告書」を作成し、認定支援機関に報告する義務があります。

困ったときは商工会のコンサルタントを活用

コンサルタント
開業が初めての個人事業主にとって頼りになる存在が、商工会・商工会議所です。
商工会・商工会議所とは、非営利で経営者・事業者のサポートなどを行っている組織で、融資の窓口にもなっています。
商工会と商工会議所は、管轄する官庁や活動地区、会員規模が異なっています。

商工会議所は、経済産業省経済産業政策が管轄する組織で、市の区域ごとに設立され、主に中小企業や小規模事業者で構成されています。
商工会は、経済産業省中小企業庁が管轄する組織で、町村の区域ごとに設立され、個人事業主やSOHOを含む小規模事業者で構成されています。

個人事業主にとってより身近な存在となるのが、商工会です。
事業の規模に関係なく、6ヶ月以上同じ市区町村で事業を行っていれば、誰でも加入できます。
地域とのつながりを重視し、業種を超えた支援を実施している商工会では、経営についての相談に気軽に応じてくれます。

日本政策金融公庫などの公的機関では、「商工会議所・商工会で経営指導を受けることが条件」の融資制度もあります。
また、商工会議所・商工会自体も、個人事業主向けの融資制度や補助金制度を用意しています。

公的機関における融資をスムーズに受けるために、そして最適な資金調達方法のアドバイスを受けるために、まずはこれらの団体に相談をしてみましょう。
中立的な非営利団体なので、偏りのない情報・助言を提供してくれます。

また、資金調達方法だけでなく経営に関する悩みについてもサポートを受けることができます。
雇用や確定申告に関する相談はもちろん、事業計画・開業準備の段階でもコンサルタントが助言してくれます。
税金や法律、経理といった、会社経営に関わる様々な分野の専門家と連携し、親身になって相談に乗ってくれます。

相談は無料で、対応できる課題が幅広いので、困ったときの相談窓口として真っ先に検討したいところです。
特に、開業資金が少なくコンサルタントを雇うのが難しい個人事業主にとって、無料の相談先があるというのは非常に心強いはずです。