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ファクタリングを利用して資金調達を行う企業は増えていますが、まだまだ多くの人が、「ファクタリングは怪しいビジネス」というイメージを持っています。
「ファクタリングは本当に違法ではないのか」「弁護士はファクタリングのトラブルに対応できるのか」など、ファクタリングについてよく理解していなければ心配事は尽きないでしょう。
ここでは、「ファクタリングは合法的な資金調達手段なのか」という基本的な疑問に答えるとともに、ファクタリングでよくある失敗・トラブルと、弁護士による法的な解決手段も紹介します。
ファクタリングは違法ではない?
ファクタリングの手数料は1回の利用で10~20%が一般的で、年率に換算すると100%を超える場合があります。
法定金利を超える高い手数料のために、違法な闇金ではないかと非難されることがあります。
それは全くの誤解です。ファクタリング業者は売掛債権の売買取引を行う業者のことであり、貸金業者ではありません。
よって、法定金利は適用されず、売掛債権の買取手数料に対する規制は存在しません。
ファクタリングは、貸金業者と比較すると大幅に手数料が高いものの、法律的には何ら問題はありません。
貸金業者より高い手数料でも、なぜ規制がされないのかというと、ファクタリング業者は債権の貸し倒れリスクを負っているからです。
平成29年3月3日の判例によると、「債権の買主(ファクタリング業者)がリスクを負うのであれば、売買手数料が相応に高くても正当性がある」と判斷されています。
手数料の高いファクタリング業者は、「償還請求権なし」の債権売買契約を扱っています。
償還請求権とは、「売掛先が倒産して債権が回収不能になった場合、債権を譲り受けた人が、債権を譲渡した人に対して、売掛金を請求する権利」のことです。
売掛先が倒産しても、償還請求権なしの取引では、ファクタリング業者が申込み企業に対して売掛金を請求することはできません。
ファクタリング業者にとってはリスクの大きい取引なので、高い手数料を取ってリスクヘッジをすることが認められているのです。
経済産業省と金融庁は、売掛債権を活用した資金調達を推奨しており、ファクタリングの利用促進を呼びかけています。
促進活動の一環として、国や地方公共団体では、「債権譲渡禁止特約の解除」が進められています。
(債権譲渡禁止特約とは、債権者と債務者の間で結ばれる契約に、債権譲渡の禁止を明記した特約のことです。)
このような働きかけにより、ファクタリングを利用したことで「倒産しそうな企業」といった風評被害が広まることは少なくなりました。
違法な取引を行う悪徳業者に注意
貸金業者の場合は、金融庁に貸金業者の登録を申請する必要がありますが、ファクタリング業は、金融庁の許可を得なくても会社を設立できるので、悪徳業者が参入しやすい点が問題になっています。
ファクタリング自体は法律的に問題ありませんが、中には違法な取引を行っている悪徳業者も存在するので、注意しましょう。
判例によると、以下の特徴に当てはまるファクタリング業者は、違法であると判断されます。
契約書を交わさない、または契約書が白紙である
ファクタリング取引においては、債権譲渡契約の内容を証明するために、必ず契約書を作成しなければなりません。
しかし、悪徳業者は契約書を作成せず、作成してもすぐに破棄をするとか、白紙の契約書を渡す、といった行為を平気でやっています。
悪徳業者が契約書をうやむやにする理由は、「手数料が異常に高い」「正体が闇金である」といったやましい部分を隠し、証拠を残さないようにするためです。
契約書を交付してくれる業者でも絶対に安心できるとは限らないので、契約内容には必ず隅々まで目を通し、不利な点・不明瞭な点がないかを確認しましょう。
担保融資をファクタリングと偽っている
担保融資とは、売掛債権を担保にした貸金契約のことで、売掛債権の売買契約を意味するファクタリングとは全く異なる取引です。
両者は売掛債権を扱うという点では似ているので、よく間違われます。
悪徳業者はそれにつけ込んで、担保融資を「ファクタリング」と偽り、違法な金利で貸付を行っています。
ファクタリングの利用金額に対して、譲渡する売掛債権の金額が低すぎると、実際は担保融資になってしまうので注意しましょう。
例えば、300万円のファクタリングを申込んだのに、50万円の売掛債権しか譲渡していない場合は、担保融資の扱いになります。
担保融資は貸金契約であり、法定金利(法律で定める上限金利のこと)による規制の対象となります。
よってこの場合、年率20%を超える手数料を要求するのは違法であり、刑事罰が適用されます。
債権を回収できない場合に備え、担保や保証人を要求してくるのも、悪質な闇金業者の手口です。
ファクタリングのトラブルは弁護士に相談しよう
ファクタリングの取引数は増えていますが、法整備がまだ十分に追いついていないために、トラブルの数も多くなっています。
悪徳業者に騙されたというトラブル以外に、契約内容を把握できていなかったなど、申込み者に起因するトラブルもあります。
いずれにせよ、お金に関する問題は、こじれる前に弁護士に相談してスムーズに解決することが重要です。
ファクタリングの認知度が高まったことを背景に、ファクタリングのトラブルに詳しい弁護士が増えています。
できればトラブルが発生する前に、業者についての怪しい点や不安なことは弁護士に相談しておきましょう。
これから利用を検討している業者や利用中の業者について、弁護士の目で判斷してもらえば、本物のファクタリング業者なのか、それとも闇金なのかを見極めることができます。
特に、資金繰りに焦っているときは細かい点を見落としやすく、トラブルに遭いやすいので、慎重な行動が求められます。
業者選びの段階から、弁護士から冷静なアドバイスをもらうようにしましょう。
ファクタリングでよく見られる失敗例をいくつか紹介するので、トラブル回避の参考にお役立てください。
業者が勝手に売掛先へ債権譲渡通知を送ろうとする
債権譲渡通知は本来、元々の債権者が債務者(売掛先)に対して送付するものなので、ファクタリング業者が勝手に送付することは認められません。
売掛先がファクタリングに同意をした上で行う「3者間取引」という方法もありますが、よほど理解のある売掛先でなければ難しいのが現状です。
業者が勝手に売掛先へ債権譲渡通知を行い、ファクタリングの利用を売掛先に知られると、今後の取引に悪影響を与えかねません。
売掛先にどうしてもファクタリングの利用を知られたくない利用者に対し、債権譲渡通知の送付をちらつかせて、法外な手数料を要求するケースもあります。
債権譲渡通知への捺印を迫られても絶対に応じず、債権譲渡を阻止するための交渉を、弁護士に依頼しましょう。
債権を二重に譲渡してしまった
債権の所有者は、ひとつの売掛債権につき、1人までに制限されています。
債権譲渡登記によって、売掛債権をファクタリング業者に譲渡すると、その登記を抹消するまでは他者に譲渡することができません。
一度に2者以上に対して債権の譲渡を行うと、「委託物横領罪」とみなされます。
譲渡した債権はファクタリング業者の所有物となるので、元の所有者である経営者にとって、その債権は「委託物(自己が委任を受けて保有する、他者の所有物のこと)」に変わります。
委託物である債権を、勝手に他のファクタリング業者へ譲渡することは、横領罪にあたります。
債権二重譲渡の対策として、ファクタリング契約を行う前に、業者が登記記録の確認を行っています。
しかし、ファクタリングを申込んだ事業者が勝手に債権譲渡登記を抹消し、別のファクタリング業者に譲渡してしまうケースがあるので、完全に対策することは困難です。
このように悪質な意図を持って債権の二重譲渡が行われた場合、さらに罪が重い「詐欺罪」に該当します。
2社間取引であれば、売掛先に債権譲渡通知がされないので、勝手に二重譲渡をしてもすぐにバレることはありません。
しかし、経営者はファクタリング業者への支払いを二重に行わなければならないので、ますます資金繰りに苦しむことになります。
支払いが滞ると、売掛先に対して複数のファクタリング会社から支払いの催促が来るので、無断で債権を譲渡したことがバレてしまいます。
結果、売掛先からの信用も失って取引中止になり、会社が倒産するという末路を辿りかねません。
「悪徳業者にそそのかされて、無理やり債権譲渡を迫られた」など、経営者に悪意はなくむしろ被害者である場合は、罪にならない可能性があります。
知識・経験が豊富な弁護士であれば、ファクタリング業者との和解交渉や、売掛先から取引中止をされないようにする交渉など、多方面で心強いサポートを行ってくれます。
ファクタリング業者への支払いができなくなった
2社間取引では、ファクタリング業者の代わりに申込み企業が売掛金を回収して、業者に支払わなければなりません。
ですが、業者へ支払うはずの売掛金を、「資金繰りが苦しい」「緊急で追加の資金が必要になった」といった理由で、企業が横領してしまうケースがあります。
このように、ファクタリング業者への支払いができなくなった場合、弁護士に相談すれば、分割支払いの交渉や債務整理などのサポートをしてもらえます。
契約内容に見落としがあった
ファクタリング業者の契約内容をしっかり把握せず、手数料の安さだけで選んでしまうと、思わぬ失敗をするケースがあります。
特に、2社間取引と3社間取引の違いや、償還請求権の有無は、十分に理解しておきましょう。
例えば、売掛先に債権譲渡や資金繰りの悪化を知られたくなければ、必ず2社間取引を選ばなければなりません。
2社間取引は、ファクタリング会社と申込み企業の2社だけで行う取引なので、売掛先に対して債権譲渡通知はされません。
3社間取引は、必ず売掛先の同意を得なければ契約ができないので、事前に相談して理解を得ておく必要があります。
手数料が安いからといって、事前の相談なしに3社間取引を選んでしまうと、売掛先との間でトラブルが起きる恐れがあります。
売掛先から取引を中止されそうになった場合は、弁護士に和解の交渉を行ってもらえます。
ほとんどのファクタリング業者には償還請求権がありませんので、普通なら貸し倒れリスクの心配は不要ですが、油断は禁物です。
いざ貸し倒れが起きると、申込み企業に売掛金を請求してくる悪質業者も存在するからです。
契約書類に「償還請求権なし」と記載されていることを、必ず確認してから契約をしましょう。
他にも、弁護士が対応できるケースとしては、以下のような事例があります。
- 高額な手数料を取られたので、過払い金を請求したい
- 業者からのしつこい取り立てに困っている
- 業者から訴訟を起こすと脅されている
- 債権の売却代金が入金されなかった
自社と業者の間だけで解決や交渉を図ろうとしても、トラブルが余計にこじれる恐れがあります。
弁護士費用が気になるかと思いますが、初回無料で相談できる法律事務所も多いので、それらを活用して気軽に問い合わせてみましょう。
どのような弁護士に相談すれば良いのか?
ファクタリングのトラブルをスムーズに解決するには、どのような弁護士・法律事務所を選べば良いのかをまとめます。
ファクタリング案件の取扱い実績が多い
ファクタリングのトラブルは、ファクタリング案件の取扱い実績が多い弁護士に相談しましょう。
法律事務所のHPに記載されている対応分野に、「ファクタリング」が入っていると安心です。
ファクタリングのトラブルに対応できる弁護士は、国内ではまだまだ多くありません。
ですが、「ファクタリング 弁護士」で検索すれば、ファクタリングに強い専門の弁護士はすぐに見つかります。
法律事務所のHPだけで判斷できなければ、ファクタリングの仕組みや判例・裁判例について知っているか、弁護士に質問をしてみましょう。
2社間取引と3社間取引の違いをすらすらと説明できて、ファクタリングの判例にも詳しい弁護士であれば、安心して依頼できます。
対応できる地域が広い
ファクタリングを扱っている弁護士は、都市部に集中しています。
地方で利用する場合は、全国からの依頼に対応している弁護士を探しましょう。
全国対応の弁護士は、多様な相談を何百・何千と扱ってきた実績があるので、トラブル解決の腕は確かです。
実力と知名度の高い弁護士を味方につけると、悪徳業者は弱気になるので、こちらに有利な条件で交渉を進めやすくなります。
ファクタリングのトラブルに関するQ&A
Q:弁護士ではなく、司法書士に相談しても大丈夫ですか?
ファクタリングの利用額が100万円程度の少額であれば、費用の安い司法書士に相談しようと考える人もいます。
しかし、トラブルが訴訟に発展すると司法書士では対応しきれないので、訴訟の経験を積んだ弁護士に依頼するのがおすすめです。
また、司法書士の中には悪質なファクタリング業者と結託して、高額な手数料を請求するケースもあるので、注意しましょう。
Q:ファクタリング業者を騙る闇金の被害に遭ったら、どこに相談すればいいですか?
ファクタリング業者を装った闇金の被害に遭った場合は、闇金トラブルに強い弁護士を探しましょう。
公的な専門窓口でも相談はできますが、話を聞いてアドバイスをしてくれるだけなので、実際の対策は自分で取らなければなりません。
闇金専門の弁護士なら、銀行口座や携帯電話の凍結といった具体的な対抗措置を取ってくれます。
闇金トラブルがこじれると、家族や職場にまで被害が及んでしまうので、スピーディーに解決することが重要です。
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